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『アマゾンが描く2022年の世界』
ここ数年、相当な頻度でAmazonを利用している。
毎日、Amazonで何かを買っている時だってある。
同じような人は結構多いと思う。
仕事で経営者の方と話していても「(Amazonの創業者)ジェフ・ベゾスのことが好きだ」と語る人はそれなりに多いし、日に日に存在感を増しているのを強く感じる。
僕は、Amazonエコー(Amazonの開発したスマートスピーカー)も利用しているので、本当にAmazonだらけになっている。
買い物はもうずっとだし、本はKindleで読むことが多いし、映画もAmazonプライム会員だから観てるし、音楽だってAmazonエコー。もうすっかりAmazonに囲まれている。
そんなAmazonのことを書いた、最近売れている本がこの本。
『アマゾンが描く2022年の世界 すべての業界を震撼させる「ベゾスの大戦略」』
2017年11月の発売以来、常にランキング上位にある。
表紙には……
「何を目論んでいるのか?次の標的などこなのか?」
とある。
Amazonについて詳しく知っている人はともかく、ひと通り知っておきたいという人にはいい本だと思う。
印象に残るポイント
Amazonの影響力は拡大
Amazonの影響力は単なるECや小売業ではなく、今ではさまざまな産業や国の金融・経済政策にまで影響を及ぼしている。
「アマゾン効果とは、もともとはアマゾンが従来から主たる事業領域としてきたECや小売業界に対する影響力を意味する言葉でしたが、アマゾンの影響力が増大するにしたがって、さまざまな産業や国の金融・経済政策にまで影響を及ぼしていることを意味するように定義が進化しているのです」
「アマゾン効果は、最近では国の金融・経済政策への影響までをも意味するようになってきました。とくにホールフーズの買収以降は、アマゾンの低価格戦略がリアル店舗にも拡大され、国全体の物価までもが押し下げられるのではないかという懸念が金融当局の間でも共有されているといわれています」
Amazonで最も重要なのはAWS
Amazonの営業利益の74%がAWS事業。通販事業が占めているわけではない。
「アマゾンの地の利を語るうえで、いま最も重要なのはAWSです。AWSはテクノロジー企業としてのアマゾンに大変な競争優位性を生み出すとともに、収益面でもアマゾンを牽引するドル箱事業に成長しています。
AWSはネット通販を支えるために多大な人、モノ、カネを投入して開発したクラウドコンピューティングの仕組みを社外に開放しビジネスとしたもの。アマゾンはクラウドコンピューティングにおいてもコストリーダーシップ戦略と差別化戦略を発揮し、今では世界のクラウド市場のシェアの3割を占めるに至っています」
「今や、AWS事業は全社売上の9%、営業利益では驚くべきことに74%をAWS事業が占めています。営業利益率も高く、アマゾン全体の利益率が3%であるのに対し、AWS事業の利益率は25%にも及んでいます。AWSが公開以来、60回以上も値下げを繰り返しているのはよく知られている話ですが、この利益率を見る限り、まだまだ値下げ余力はあると見るべきでしょう」
「よく『アマゾンは利益をため込まず、顧客に還元している』と語られますが、正確には『AWSであげた利益を他の事業に回している』という構造であることが、ここからよくわかります」
AWSについては知っている人も多いとは思うけど、一応説明すると、アマゾン・ウェブ・サービスのこと。
Amazonほどの企業なので、セキュリティ技術が高いイメージは圧倒的に浸透しているし、当然、多くの企業がITシステムなどをAWSに移管したくなる。
ただ、それだけの話ではなく。起業家の方であれば、自社のビジネスの中でこのAWSと同様に「売れるものがあるのか」を考えるのも一つだ(ウェブのサービスというわけではなく、自社のビジネスの中で根幹になっていて、他社が欲しがるものをサービスとして他に提供するということ)。
僕が関わっている企業の中でも、同様の考え方で生み出されたサービスが非常に売れている。
ビッグデータを集め、活用する
アマゾンがビッグデータを用いる企業であるのは当然のことだけど、重要なのはそれらを大量に集める仕組み。あなたのビジネスでも他にできることがあるのか、考えるのも一つだ。
「アマゾンは『ビッグデータ』という言葉がこれほど普及するはるか以前から、ECサイトにおいて、購買利益から商品のリコメンデーションを行ない、サイト内の行動履歴やクリック率からサイト環境を改善するなど、ビッグデータを徹底的に活用してきました。
『Data is King at Amazon』とは、アマゾンにかつて在籍したRonny Kohavi氏の言葉。アマゾンの本質はECサイトでも、システム会社でもなく、ビッグデータ企業であると言うことも可能でしょう」
「ビッグデータの集積装置としては、ECサイト、キンドル、アマゾン・エコー、アマゾン・アレクサ、アマゾン・ゴー、ホールフーズなどがあります。これらはすべて、顧客に対するサービスそのものでありながら、ビッグデータの集積装置でもあるのです」
Amazonおよびジェフ・ベゾスの意思決定
意思決定の方法は2つに分類されている。後戻りできるものと後戻りできないものの2つに。
ここはベンチャー企業、特に経営者と社員のビジネスの関わり方に参考になる考え方だと思う。
「意思決定方法を2つに分類する、つまりは、意思決定には後戻りできるものと、できないものに分類する、そして後戻りできるものに関しては失敗する可能性も織り込みつつどんどん決定すればいいが、後戻りできないものは深く議論する」
「ベゾスは『自分自身は賛成しないけれど、みんながそう決めていくのであれば、決めた以上は自分もしっかりコミットする』ことがあると言っています」
「『後戻りできる項目』については部下に権限委譲を進めて、『自分自身は賛成しないけれど、みんながそう決めていくのであれば、決めた以上は自分もしっかりコミットする』と言っているのです。ベゾスが『後戻りできない項目』についての意思決定に深く関与しているであろうことは容易に想像できるでしょう。『組織のなかでできるだけ現場に近いメンバーに意思決定を委ねたい、でもそれは後戻りできることに限定するよ』ということなのです」
その他、詳細はぜひご一読いただきたい。
書籍内容
小売り・流通に変革をもたらしてきたECの巨人・アマゾン。
近年は、リアル店舗への進出にとどまらず、クラウド、宇宙事業、AI、ビッグデータなどの分野へも展開、米国ではアマゾンに顧客と利益を奪われることを意味する「アマゾンされる」という言葉が生まれるほどに、その勢いを増している。
本書は、大学教授、上場企業の取締役、コンサルタントという3つの顔を持つ著者が、膨大な資料と独自のメソッドで、「アマゾンの大戦略」を読み解く一冊。
著者情報
田中道昭
「大学教授×上場企業取締役×経営コンサルタント」立教大学ビジネススクール(大学院ビジネスデザイン研究科)教授。シカゴ大学経営大学院MBA。専門は企業戦略&マーケティング戦略及びミッション・マネジメント&リーダーシップ。三菱東京UFJ銀行投資銀行部門調査役、シティバンク資産証券部トランザクター(バイスプレジデント)、バンクオブアメリカ証券会社ストラクチャードファイナンス部長(プリンシパル)、ABNアムロ証券会社オリジネーション本部長(マネージングディレクター)等を歴任し、株式会社マージングポイント代表取締役社長