『お金2.0』
この本はとにかく人気。今日現在でもAmazonの総合ランキングで3位。ビジネスカテゴリーでは1位。ちょっと普通じゃないくらい売れている。
ここまで売れていると、誰だって読まなきゃいけないような気持ちになるだろう。
ただ、この本はタイトルが『お金2.0』だから、お金を節約しよう、とか、投資しよう、などという人たちも買う本だと思うのだけど、そうした本ではなく、まさにビジネス書。
この本で書かれていることについては賛否両論あると思うが、ビジネスに活かせる視点もかなりある。
(「自然の構造に近いルールほど社会に普及しやすく、かけ離れた仕組みほど悲劇を生みやすい」など、松下幸之助を思わせる記述だし)
『起業マーケティング』を読んでいる起業家の方、フリーランスの方なら、きっとヒントがあるはず。
興味がある人はぜひ読んでみてほしい。
お金2.0
印象に残ったポイント
お金の独占が終わる
「お金が価値を媒介する唯一の手段であったという『独占』が終わりつつあるということ。価値を保存・交換・測定する手段は私たちがいつも使っているお金である必要はなくなっています」
「お金そのものには価値がなくなっていき、むしろどのように経済圏を作って回していくのかというノウハウが重要な時代に変わっていくと考えています」
そもそも価値を交換する手段がお金だけではなくなっている。仮想通貨もあるし、Tポイントなどの企業が発行するポイントもある。そうした価値をもつことで、いつでも他の価値と交換できる。結果、お金自体の価値が下がっている。
その他、SNSのフォロワー数も他者から注目されているという価値だし(お金にだって変えられる)。組織(会社)での「社員(人材)」「情報(データ)」もお金を稼ぎ出す資産(価値)ということになる。
お金だけが価値という独占はまさに終わる。
価値主義になっていく
「今後は、可視化された『資本』ではなく、お金などの資本に変換される前の『価値』を中心とした世界に変わっていくことが予想できます。この流れを『資本主義』ではなく、『価値主義』と呼んでいる」
この価値については3つに分類できるという。
- 有用性としての価値
資本主義がメインに扱う価値で「役に立つか?」という視点から考えたもの - 内面的な価値
愛情・共感・興奮・好意・信頼など実生活に役に立つわけではないが、その個人の内面にとってポジティブな効果を及ぼすもの - 社会的な価値
慈善活動やNPOのように、個人ではなく社会全体の持続性を高めるような活動
これまでは1の「有用性としての価値」がメインだったが、2の「内面的な価値」や3の「社会的な価値」なども価値として扱われていくという。
「有用性としての価値だけでなく、人間の内面的な価値や、全体の持続性を高めるような社会的な価値も、すべて価値として扱う仕組み」
個人や企業が経済を作れる
「経済とは簡単に言うと『人間が関わる活動をうまく回すための仕組み』です。今はスマホやブロックチューンなどのテクノロジーを使えば、個人や企業が簡単に通貨を発行して自分なりの経済を作れてしまう」
これは既にポイントがまさにそうだし。それが派生して、価値を認められるような「個人」でも実現可能だろう。
経営者は「経済」をつくるプロであることが求められる
持続的かつ自動的に発展していく「経済システム」の共通点
- 報酬が明確である(インセンティブ)
生物的な欲望(衣食住、子孫を残す)、社会的な欲望(金銭、承認、競争)、3M(儲けたい、モテたい、認められたい)- 時間によって変化する(リアルタイム)
常に状況が変化するということを、参加者が知っていることが重要- 運と実力の両方の要素がある(不確実性)
不確実性が全くない世界では、想像力を働かせて積極的になにかに取り組む意欲が失われる- 秩序の可視化(ヒエラルキー)
実際に社会で普及した経済システムは例外なくヒエラルキー(偏差値、年収、売上、価格、順位、身分、肩書き)が可視化されていて、明確な指標となる- 参加者が交流する場がある(コミュニケーション)
参加者同士が交流しながら互いに助け合ったり議論したりする場があることで、全体がひとつの共同体であることを認識できる」
「自然の構造に近いルールほど社会に普及しやすく、かけ離れた仕組みほど悲劇を生みやすい」
有機的なシステムの3要素
- 自発的な秩序の形成
- エネルギーの循環構造
- 情報による秩序の強化
お金や経済の世界の変化の流れは「中央集権化」から「分散化」
「分散化によって、独自に価値を発揮する経済システムそのものをつくることができる存在が大きな力をもつ」
分散化による経済の一部
- 共有経済(UBER、airbnb)
- トークンエコノミー(仮想通貨、ブロックチェーン)
- 評価経済(Instagram、YouTubeなど)
分散化によって、独自に価値を発揮する経済システムそのものをつくることができる存在が大きな力をもつ。
今後10年は「自動化」と「分散化」が重要で。
「自動化」+「分散化」=「自律分散」が多くの産業のビジネスモデルを覆す。
そうして
「お金そのものには価値がなくなっていき、むしろどのように経済圏を作って回していくのかというノウハウが重要な時代に変わっていくと考えています」という話になる。
人間は精神的(内面的)な充足を求めることに熱心になる
「人生の意義や目的とは欠落・欲求不満から生まれるものですが、あらゆるものが満たされた世界ではこの人生の意義や目的こそが逆に『価値』になりつつあります。
人間は、物質的な充足から精神的な充足を求めることに熱心になっていくことは間違いありません」
お金の価値が低下し、他の価値に目を向けるのであれば、こうなる可能性は確かにある。
内面的な欲望を満たす価値を提供する人が成功しやすい
「答えは非常にシンプルで『好きなことに熱中している人ほどうまく行きやすい』世の中に変わっていく。人生の意義のようなものを探している世界では、内面的な欲望を満たす価値を提供できる人が成功しやすくなる」
「人間の内面的な価値に関しては、現在の資本主義の枠組みでは上の世代が認識しにくく、ここには大きなチャンスが存在しています」
人生の意義、目標を持ち、他人に与える人たちの価値がどんどん上がる
「これから誰もが自分の人生の意義や目標を持てることは当然として、それを他人に与えられる存在そのものの価値がどんどん上がっていくことになる」
自分の価値を提供し、収益に換えていくことができる
「個人が自分の価値を収益に換えて生きていける環境はもはや整備されつつあり、本当の価値を提供できる人は会社に属して働く必然性が消えてきています。会社とは自分の価値を発揮する、たくさんあるうちの1つのチャンネルになってきています」
「この先は『自分の価値を高めておけば何とでもなる』世界が実現しつつある」
お金2.0
書籍内容
【発売前重版決定!話題沸騰】
仮想通貨、フィンテック、シェアリングエコノミー、評論経済。
「新しい経済」を私たちはどう生きるか。
メタップス創業者が明かす、資本主義の先の世界。
〈資本主義を革命的に書き換える「お金2.0」とは何か〉
2.0のサービスは、概念そのものを作り出そうとするものが多いので、既存の金融知識が豊富な人ほど理解に苦しみます。あまりにも既存社会の常識とは違うので「今の経済」のメインストリームにいる人たちにとっては懐疑や不安の対象になりやすいといった特徴もあります。そして、それこそが全く新しいパラダイムであることの証でもあります。本書ではまずお金や経済の仕組みから、テクノロジーの進化によって生まれた「新しい経済」のカタチ、最後に私たちの生活がいかに変わるか、の順番に解体していきます。
お金2.0
著者情報
佐藤航陽
福島県生まれ。早稲田大学在学中の2007年に株式会社メタップスを設立し代表取締役に就任。2015年に東証マザーズに上場。フォーブス「日本を救う起業家ベスト10」、AERA「日本を突破する100人」、30歳未満のアジアを代表する30人「30 Under 30 Asia」などに選出。2017年には時間を売買する「タイムバンク」のサービスの立ち上げに従事。宇宙産業への投資を目的とした株式会社スペースデータの代表も兼務。