『天才の閃きを科学的に起こす 超、思考法』
浜松町で打合せが終わった後、駅近くにある書店で見つけたのがこの本。
『天才の閃きを科学的に起こす 超、思考法―コロンビア大学ビジネススクール最重要講義』
特に気になったのが帯にある「2時間で『考え方』が一生変わる衝撃メソッド」というところ。この類の一流スクールシリーズ本は外れもあるので、少し不安もあったのですが、本を開いてみると、著者が書いた「はじめに」にこうありました。
とくにMBAコースの学生だったハナ・レズニコフは、「家族や友人にこのコースの内容を伝えたいので、本を書いてほしい」と私に言ってくれた。この本は、その結果だ。
マーケティング的にいえば、顧客の声を用いた社会的証明なのですが。それにまんまとひっかかりました。
でも、ひっかかって良かったと思えるほど、参考になる点が多い本なので、ここで紹介していきます。
『超、思考法』印象に残ったポイント
第5感とは
第5感はわかりますよね。視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚のことです。
でも実はこの五感は「脳の力」。
鼻で感じ取った匂いを「夏の雨の匂い」などに変換したり、耳が聞いた音を「鳥のさえずり」だと認識する。まさに脳の力だからです。
このように「夏の雨の匂い」などと認識するのは、以前にそれを嗅いだことがあるからであり、「記憶」が大きな役割を果たしています。
第6感とは
では、第6感は何かというと、これは「直感」と呼ばれるものです。
これも「記憶」が需要な役割を果たす。
以前と同じような状況を経験しているため、目の前の状況に対して素早い判断を下したりできる。つまり、過去に幾度となく繰り返してきた経験に基づいて、迅速な意思決定ができるわけです。
では、第7感とは
それでは、第7感とは何か。
直感が役に立つのは過去と似た状況に出会った時のみで、新たな状況の場合はうまく働かない。そこで必要なのが第7感。誰も思いつかなかったような、突然のひらめきを生む第7感です。
この第7感では失敗例はあまり役に立たない。
「基本的に、失敗例が有用なのは、きわめてよく似たケースに直面しているときだ。第6感(直感)にとって、失敗は重要だ。第6感を磨くためには、成功だけでなく失敗も経験しなければならない。
たとえば音楽の先生は、ある曲を演奏する際にもっともありがちな失敗を生徒に教える。起こり得るすべてのミスについて学ぼうとするのは効率的ではないが、よくある失敗について学ぶことは、あらゆる分野で第6感を磨くために有効な方法だといえる。
一方の第7感では、失敗例はあまり役に立たない。
(スターバックスコーポレーションの会長兼社長兼最高経営責任者の)ハワード・シュルツはコーヒーバーがミラノで繁盛していたからこそ、大きな衝撃を受けた。第7感が結びつける歴史の先例は、失敗例ではなく成功例だ」
第7感を得る方法
プロイセン王国の軍事学者クラウゼヴィッツは、近代戦略研究の開祖。
クラウゼヴィッツは当然だけど、神経科学については何も知らなかった。だが、戦略的思考は4つの要素で形成されると考えていました。
この4つの要素こそ、本書で第7感を構成すると考えているものだったわけです。
- 歴史の先例
- オープンマインド
- 突然のひらめき
- 決意
1.歴史の先例
第7感のようなひらめき。
そのひらめきとは、過去に人間が物事を成し遂げるためにしてきたこと、つまり「先例」の組合せです。そのため、まずは先例を集めることです。
2.オープンマインド
オープンマインドとは既存の考えにとらわれないこと。
既存の考えをいったん忘れ去らないとひらめきを得ることはできません。
まずは目の前の状況に対する既存の考えを頭からすべて忘れることのできる心の状態をつくること、それが重要になってきます。
「昔ながらの電話交換機を思い浮かべてほしい。当時は、へッドフォンをつけたオペレーターが、大きなボードにある大量の穴に電話線のプラグを抜き差ししていた。
これを脳として考えたとき、オープンマインドとは、いったんこのボードのすべてのプラグを抜くことだ。そして、まったく新しい組み合わせで電話線を差し込んでみることで、新しいアイデアを得るのだ」
3.突然のひらめき
第7感のひらめきを得るのには1日かかることもあれば、1週間や1ヶ月などもっと時間がかかる時もある。
シャワーをあびている時かもしれないし、寝ようとしている時かもしれない。ふと、ひらめきが起こる(そうした時はすぐにメモすることだ)。
いったん、気づいてしまえば、非常に簡単に思えることがあります。シュルツはこう語る。
「いったん気づいてしまえば、それはあまりにも自明だった」
4.決意
第7感によるひらめきによって素晴らしいアイデアを手に入れた時、僕たちが感じるのは「何をすればいいかわかった」という程度ではありません。
そうではなく、「何をすればいいかわかった。ぜひそれをやってみたい!」と思うわけです。
アイデアによって心にスイッチが入る。
シュルツの言葉を借りると、
「すさまじく直接的で、リアルだった。私は震えていた」
すぐにでも行動したくて仕方がない心境になる。そのひらめきが「情熱」を生んでしまう。
ネガティブな感情から自分を解放する方法
ストレスが生むプレッシャーは良いものですが、それが生み出すネガティブな感情は悪いもの。そのため、ネガティブな感情から自分を解放する必要があります。
そのテクニックが「フリー・ユア・マインド」。
次の4つのステップとなっています。
- 問題
- 過去/未来
- カルマ/ダルマ
- 行動
1.問題
まずは問題(悩みの原因)をすべて書き出すことからスタートします。問題は具体的であればあるほど良い。各問題を、1ページに1つずつ書き出していきます。
2.過去/未来
書き出したすべての問題を「過去」か「未来」のどちらかに分類していきます。
ネガティブな感情は、必ず「未来への不安」か「過去の苦しみ」のどちらか、あるいは2つの組合せから生じます。
3.カルマ/ダルマ
「カルマ」「ダルマ」は古代インドのサンスクリット語に由来する仏教用語。
仏教では「カルマ」は自分ではコントロールできないこと、「ダルマ」は自分でコントロールできることを意味します。
この「カルマ」「ダルマ」について、それらの問題について何かできることはないかと考えていく。
ここで重要になってくるのは、「カルマ(自分ではコントロールできないこと)」に直面したときに、「ダルマ(自分でコントロールできること)」は何かについて考えることです。
実際にそれを行うかはともかく、思いついた「ダルマ」はすべて書き出していきます。
4.行動
それぞれのカルマとダルマに対する、とるべき行動を決めます。
それはまさに「ToDo(やるべきリスト)」のようなものでなければならない。
具体的にリスト化し、実際に行動していきます。
「『フリー・ユア・マインド』は、『ストレスを戦略に変える』テクニックだ。
前述したように、ストレスから生じるプレッシャーは良いものだが、ストレスから生じるネガティブな感情は悪いものである。
そこで重要になるのが、プレッシャーに対してネガティブな感情ではなく、オープンマインドで反応することだ。
オープンマインドで反応することで、ストレスへの対処法についての良いアイデアが浮かびやすくなる」
『超、思考法』書籍内容
★世界のトップスクールで学生が殺到!
誰もの「考え方」を根本的に変えてしまう驚くべき授業とは?
論理のカベを超えて、誰よりも「速く」「深く」考える方法を、わかりやすく明快に説いた話題の超人気講義がついに書籍化!
★最新科学が解明した脳の力「第7感」で思考力が驚異的に変わる!
・深く考えるには、どう頭を働かせればいいのか?
・驚くべき考えを「ひらめく」には、どんなプロセスを踏むべきか?
・何が「思考の材料」になるのか?
・「論理ではわからないこと」に、どう答えを出せばいいのか?
脳の恐るべきパワー「第7感」を駆使した、どんな悩みも、どんな問題も解決できるまったく新しいメソッド!
★思考において最も重要だが最も時間のかかる「答え」を出すプロセスが劇的に合理化し、最速化する!
◎すべてに「フラット」に接する
◎参考になる先例を部分的にピックアップする
◎問題を「過去・未来」に分類する
◎とにかく端的に書き出す
◎「自分で動かせること」と「動かせないこと」を分ける
◎理解のプロセスで記憶に定着させる
◎悲観でも楽観でもなく戦略的に考える
◎問題解決のためのGEのマトリックス
◎「矛盾した状況」を一瞬で解決する
科学が生んださまざまな知見により「思いもよらない視点」を見つけたり、「驚くような答え」を次々と得られる究極の思考法、ぜひ読んでほしい一冊だ。
『超、思考法』著者説明
ウィリアム・ダガン(William Duggan)
コロンビア大学ビジネススクール上級講師。フォード財団での戦略コンサルタントを経て、コロンビア大学ビジネススクールで、「第7感」について大学院課程とエグゼクティブコースで教えている。また、世界の企業の何千人ものエグゼクティブに「第7感」について講義を行っている。2014年、学長教育優秀賞を受賞。著書に『ナポレオンの直観』(星野裕志訳、慶應義塾大学出版会)、『戦略は直観に従う』(杉本希子・津田夏樹訳、東洋経済新報社)など。『戦略は直観に従う』が「strategy+business」誌で年間最優秀戦略書に選出されるなど、その独創的で精力的な活動は各界で高い評価を得ている。