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『顧客を説得する7つの秘密』
六本木ゲートタワーにあるTSUTAYA TOKYO ROPPONGI店。
ここは書店が併設されていて、本を読みながら、コーヒーなどが楽しめる店舗なのだけど。
僕は仕事が立て込んでいると、深夜までここで仕事をすることがある。本を読むことで気分転換もできるし、結構、仕事をしている人もいるので、居心地も良い(少し、以前より混んでいるので、前の方が良かった面もあるけど)。
……で、ここで見つけた、平積みされていた1冊がこの本。表紙を見た瞬間に気になり、購入してしまった。それが『顧客を説得する7つの秘密』という本
Amazonにはまだレビューひとつないけど、優れた本だと思う。
僕も好きな「爬虫類脳」や「無意識」へのアプローチについて語られている。これについては実際にマーケティング現場でも用いるけど、有効なアプローチ。
本の冒頭はこう始まる。
『1〈トカゲ〉の正体を見極めろ
相手をその気にさせない。
その相手は身近な上司や子供、配偶者など誰でもいい。何百万もの人々相手に「健康にいい食品を食べましょう」「私の支持候補へ投票してください」「Galaxyの携帯電話を買ってください」などと宣伝する場合でもいい。
いずれの場合にせよ、誰かを説得し、その気にさせるのは難しいものだ。
しかし人間の心理を理解することで、相手に自分の思い通りの行動を取らせることができるようになる」
さて、読みたくなってこないだろうか。
この本のポイント
トカゲとは何か
人間の頭には無意識と意識があり、そのうちの無意識のこと。
「人間の頭には二つの異なる思考プロセスが存在する。
1.自動システム、すなわち無意識、そして2.熟考システム、つまり意識である。前者の自動システムというのは私達の選択総てに影響し、多くの場合唯一の影響因子である。
この自動的な無意識の根幹は、人が古くよりもつ脳の構造、それこそトカゲや全ての脊椎動物と共有する部分にある。もちろんこの無意識の発展の度合いは種によって大きく異なるが、その基礎的な働きは同じだ。すなわち、快感を追い求め苦痛を避けるということに尽きる。
この自動的な精神システムを、リチャード・セイラーとキャス・サスティーンは『内なるトカゲ』と呼び表した」
「この無意識のおかげで私達は歩き、話し、五感から得た情報を理解し、好き嫌いを育み、友達を選び、そして恋に落ちることができるのだ」
内なるトカゲに逆らうことはできない
私たちはトカゲの存在について、普段考えたりはしないが、私たちはそれに逆らうことはできない。
しかも、トカゲは(私たちの)意識とは違う、世界の見方をする。
次のように、だ。
- トカゲにとって、心に最もしっくりくるものこそが真実である。トカゲは「馴染みがある」ことと「真実である」ことの判別ができない。
- トカゲにとって、人は「なぜそれをしたのか」ではなく、「何をしたのか」で判断される。トカゲは行動に注目し、動機を無視する。
- このトカゲの性向を念頭におくならば、人に何かをさせたければ、相手の考えや信念ではなく行動自体を変えさせるよう努めるべきである。なぜなら人の行動を変える方が、その動機を変えるよりも簡単だからだ。
- 人のすることに対して「なぜ」と問うてはいけない。人は自分自身の行動を理解していないものである。相手の行動理由を知ることは可能ではあるが、それを単に直接尋ねるだけで得ようとしてはいけない。
- トカゲは即時的な、確実な、そして感情的な利益が行動の結果として得られることを好む。しかし一般に奨励されているダイエットや節約や禁酒などの行動の利益はこれらの対極に位置している。トカゲを理解することで、遅効性を即効性に、不確実性を確実性に、そして論理性を感情性へと、利益を変質させることができるようになるだろう。
意識は時々しか機能しない
「無意識であるトカゲの影響はそれほど大きくないはず」と考える人もいる。意識があるのだから、と。だが、実際には意識は時々しか機能しない。
「意識は、私達がそのつもりでいる時にしか働かない。
それは意図的で、かつ時々にしか機能しない。一方、無意識は望もうと望まなかろうといつでもアクティブな状態にある。それは私達が意図的にオンにすることも、オフにすることもできないのだ。(中略)ほとんどの場合、私達の意識は内なるトカゲの提案に従う」
相手をうまくその気にさせる7つの秘訣
相手をうまくその気にさせるには、私たちは内なるトカゲ(無意識)に働きかける必要がある。そのための7つの秘訣は次のとおりだ。
- トカゲの言葉を話せ
無意識には独自のコミュニケーション方法、つまり独特の文法とスタイルを持った言語がある。 - 考えではなく行動をねらえ
相手の行動を変えるのは、その意見を変えるよりも簡単だ。 - 望みを変えるな、望みを満たせ
相手が欲しいものをどのようにして手に入れればいいかを示してやることで、相手をその気にさせることができる。 - 尋ねるな、掘り起こせ
人は自分がなぜその行動をするのか分かっていないことが多い。しかしその「なぜ」を見つけることはできる。 - 感情に訴えろ
事実を提示しても、相手の感情的な選択を変えることはできない。 - 経験に先行して期待を作り出せ
実際の経験は、人が事前に抱いていた期待に影響を受ける。 - ひと工夫しろ
ちょっとしたアートの心を取り入れることで、相手の無意識を惹きつけることができる。
書籍内容
今まで見えなかった消費者の本心は、「無意識」に注目することで捉えられる。Apple、Intel、コカ・コーラ、ウェスティンホテル…消費者の購買決定の9割を担う、「無意識」に訴求する技術。
価値観や生活様式にも幅がある現代、これまでのマーケティングの定説では消費者の購買決定に関して説明がつかないし、購買へ至らないという状況が頻出している。
しかし、「無意識」に注目したニューロマーケティングは別だ。
無意識下の思考の仕組みは、人類がトカゲのような爬虫類だったころから変わっておらず、喜びを求め、苦痛を嫌厭するというもの。
その性質を理解し働きかけることで、ターゲットを「説得」し、こちらが望む行動をとらせることができるのだ。
最先端のニューロマーケティングの7つの秘密を伝える。
著者説明
ジェームズ・C・クリミンス
27年間にわたり、主にDDBシカゴのチーフ・ストラテジック・オフィサーを務める。
また、世界的なブランドとして知られる、バドワイザー、マクドナルド、ステートファーム、ベティ・クロッカーなどのブランド企画ディレクターとしても活躍。
社会学の博士号と統計学の修士号を持ち、米国ノースウェスタン大学medillスクールで、統合マーケティングコミュニケーションを教えた。
誰もが、説得力と影響力を手にする方法を、科学的、専門的、学問的な観点を背景に伝えている。