残酷すぎる成功法則
『残酷すぎる成功法則』というタイトルが気になって、読んだのがこの本。
いわゆる自己啓発本だけど、通常、それは正しいよ、といわれている成功法則が違うよって本。サブタイトルも
「9割まちがえる『その常識』を科学する」
どのような常識が9割がまちがえているのかが気になったので読んでみました。
内容は様々な自己啓発の成功法則を、とにかくエビデンス(証拠)と照らして見ていくもの。
通常、よくあるのは個人的な経験からこれが「成功する」という内容。それが無名であれ、有名な人であれ、歴史上の偉人であれ、その人たちが「私はこうやって成功したんだから、あなたもやれば」的な感じです。
ただ、成功しているからといって、その人が言っていること全てが正しいわけではなく、環境に恵まれていたかもしれないし、その言葉には現れない別の要素。
たとえば、外見が人に好かれるとか、表情がいいとか。そういった本人も気がついていないことが成功要因になっている場合だってある。それはわからないわけです。
だから、いわゆる成功法則というのは普遍性がない。
本書の冒頭に次のようにある。
「ジャンボ宝くじで三億円当たったひとが、『宝くじを買えばあなたも億万長者になれる』という本を書いたとしたら、『バカじゃないの』と思うだろう。なぜなら、この『成功法則』には普遍性がないから」
実際、これをやれば成功すると本気で信じて取り組んでいるのに、それが成功法則でも何でもなかったら、最悪です。
まさにそのために多くのエビデンス(証拠)で見ていったののがこの本。
原題は「Barking up the wrong tree(間違った木に向かって吠えている)」。まさに役に立たない成功法則に向かって吠えるなっていう意図の本。
もちろん、そのエビデンスがどれだけの精度のものかはわからない。
ただ、それでもそうしたエビデンスがない成功法則よりは成功確率は上がるはず。それでは『残酷すぎる成功法則』の印象に残ったポイントを紹介していきます。
残酷すぎる成功法則
印象に残ったポイント
ほしいものを夢に思い描いても望みは実現しない
『引き寄せの法則』などにもあるが、ほしいものを夢に思い描き、望み続けると、その望みは実現するというのがあるけど、それはどうなのか。
実はそんなことはないという。
ニューヨーク大学心理学教授のガブリエル・エッティンゲンによると、人間の脳は現実と幻想を見分けるのが得意ではありません。見分けることができないからこそ、(幻想である)映画などを観ても、まるで現実のようにのめりこんでしまう。
そのため、何か望みを実現したことを夢見てしまうと、脳はその幻想を現実のように認識し、まるですでに望みは実現したもの(望みを手に入れたもの)と勘違いする。そうして、努力することをやめてしまうわけです。
たとえば……、
- 理想の仕事につくことを夢見ていると、出願書類を出す数(機会)が減って、内定も減る。
- ダイエットであれば、細くなった水着姿をポジティブに思い続けた女性は、ネガティブな(太っている)イメージを思い続けた女性より減量がうまくいかなかった(10kgほど少ない)。
- 成績で多くのAをとったことを夢見ていると、勉強時間が減り、成績が落ちる。
望みを実現したことを夢見つづけると、その幻想を現実のように認識し、努力をやめてしまうわけです。
目標を達成するためにはざっくり計画する
目標を達成するにはあらかじめ計画をざっくりと立てておくことが重要。
「ニューヨーク大学の心理学者、ピーター・ゴルヴィツァーとヴェロニカ・ブランドスタッターの研究によれば、たとえば、目標を達成するための行動をいつ、どこで、どのように取るかなど、ざっくりと計画しているだけで、学生たちが目標を実現できる確率が四〇%上がったという」
次のことをざっくりと計画を立てるだけで目標が実現する確率が40%上がる。
- いつ
- どこで
- どのように
そして、すでに予想がつく障害については次のことがポイントになります。
「もしも」の時に「そのときは」どうするのかを考えておくこと。これによって障害で立ち止まってしまうことも少なくなります。
「二つの魔法の言葉は、『もしも(If)』と『そのときは(Then)』である。予見できるどんな障害に対しても、『もしXが起きたら、Yをすることで対処しよう』と考えておくだけで、結果は大違いだ」
面白いゲームに含まれる共通要素
面白いゲームに含まれる4つの共通要素は次のものです。
- 勝てること(Winnable)
- 斬新であること(Novel)
- 目標(Goals)
- フィードバック(Feedback)
実際、これは様々な企業の支援をしていても強く感じます。特に感じるのは「勝てること」です。勝てない期間が長期間続くと大抵の人が耐えられなくなってしまいます。
成功に必要なこと
「環境」
成功に必要なことの1つは「環境」。
ハーバード・ビジネススクールのボリス・グロイスパーグ教授が次のように述べています。
「ウォールストリートの敏腕アナリストたちが競合会社に転職すると、トップアナリストの座から転落することに気がついた。(中略)一般に、専門家の能力はもっぱら本人特有の技能によるものと考えられ、環境の力は見過ごされがちだ。
たとえば、専門家本人が周囲の内情を知り尽くしていること、彼らを支えてくれるチームの存在、一緒に働くうちにつくり上げた簡潔な伝達法、などといった要素だ。それを裏づけるように、(中略)花形アナリストが自らのチームを率いて転職した場合、そのままトップの業績を維持していることを発見した」
「自分への思いやり」
そして、もう1つが「自信」よりも「自分への思いやり」です。
テキサス大学准教授のクリスティン・ネフは「うまくいかないときは自分を許せ」と述べています。
「自分自身への思いやりを持てば、失敗したときに、成功の妄想を追う必要もなければ、改善の見込みがないと落ち込む必要もない。ばかげた期待を膨らませたり、目標に届かないと自分を責めたりしてヨーヨーのように上がり下がりすることもない。私はなんて素晴らしいんだ、と自分に嘘をつく必要もない。そのかわり、うまくいかないときには、自分を許すことに心を注げばいいのだ」
「セルフ・コンパッション(自分への思いやり)には、自尊心のプラス面がすべて含まれるが、マイナス面は含まれない。良い気分で仕事の成果を上げられ、高慢ちきになることもなければ、自己の改善を怠ることもない。自信と異なり、自分への思いやりは妄想につながることもない」
外向性が高まると業績が落ちる
外向性については成功要因と考えられるけど、この本では次のように述べられています。
「外向性は個人的な熟達度と負の関係にある」
という研究があります。要は外交的であればあるほど、業績が落ちるということ。多くの友人をもつことは確かにメリットなのだけど、注意散漫の元にもなるということです。
残酷すぎる成功法則
その他のポイント
その他、次のポイントが気になりました。
人はやらなかったことを最も後悔する
これは様々な本にも書かれているし、よくいわれていることですが、真実です。
コーネル大学の心理学教授、ティモシー・ギロヴィッチはこう語っています。
「人びとは、失敗したことより行動を起こさなかったことを2倍後悔するという。(中略)
私たちは失敗を正当化するが、何も試みなかったことについては、正当化できないからだ。
さらに、歳を重ねていくにつれ、人は良いことだけ覚えていて、悪いことは忘れてしまう傾向にある。そんなわけで、単純に多くのことを経験すればするほど、年老いたときに幸福感が増し、孫に聞かせる武勇伝も増えるというわけだ」
武勇伝を増やす意味でもやった方がいい。
すぐれたリーダーになるかは、彼らが統率する人びとのタイプによる
アダム・グラントがリーダーシップについて研究している時、興味深い傾向を発見した。次のとおりです。
「外向的な人と内向的な人のどちらがすぐれたリーダーになるかは、彼らが統率する人びとのタイプによるというのだ。従業員が受け身の場合には、社交的でエネルギッシュな外向型の人間が本領を発揮する。しかしながら、目的意識のある人々を率いる場合には、内向型のリーダーのほうが望ましい」
仕事の成功は大切な人間関係を犠牲にすることがある
これについては次のとおり、書かれています。
「常軌を逸したように夢中になれる天職を持った者は目標を達成し、成功を手に入れるが、反面、幸せへの鍵である大切な人間関係を犠牲にすることがある」
「ロンドンスクール・オブ・エコノミクスの進化心理学者、金沢聡の論文『なぜ生産性は年齢とともに衰えるのか――犯罪と天才に見られる共通性』では、少なくとも男性の場合、結婚は、科学者、作家、ジャズミュージシャン、画家、さらには犯罪者の生産活動に著しいマイナス効果を及ぼすという結果が報告された。(中略)『科学者は結婚後、ただちに研究活動が衰えるが、未婚の科学者は、晩年まで偉大な科学的貢献を続ける』」
残酷すぎる成功法則
書籍内容
世の中のありとあらゆる「成功ルール」を検証した全米ベストセラー。
あなたがこのままではダメになる理由とこれからうまくいく方法、ぜんぶ最新の証拠(エビデンス)をつけて教えます!
◎あなたは成功者の実像を間違えていませんか?
・成功者は優秀?――NO! アメリカの大富豪の大学での成績はよくない
・成功者は社交的?―― NO! 第一線の専門家やトップアスリートの9割は、「内向的」
・成功者は健康?―― NO! シリコンバレーの成功者の多くは精神疾患スレスレ
◎最先端の「成功サイエンス」を知っていますか?
・世界を変えるのは、あなたの「長所」ではなく「欠点」
・自信より大切な「自分への感情」とは?
・10年前には存在しなかった新しい「巨大ストレス」と予防法
アダム・グラント、ダニエル・ピンク・・・有名作家がこぞって絶賛!
「ニューヨーク・タイムズ」や「ウォール・ストリート・ジャーナル」で何度も記事が引用されている「米最重要ブロガー」衝撃のデビュー作!
2017年上半期、米アマゾンが選ぶ「ベストビジネス書」の1冊にも選定!
残酷すぎる成功法則
著者紹介
エリック・バーカー
大人気ブログ“Barking Up The Wrong Tree”の執筆者。脚本家としてウォルト・ディズニー・ピクチャーズ、20世紀フォックスなどハリウッドの映画会社の作品に関わった経歴をもち、『残酷すぎる成功法則―9割まちがえる「その常識」を科学する』は、初の書き下ろしにして全米ベストセラーに