『超AI時代の生存戦略 シンギュラリティに備える34のリスト』
2017年11月19日放送の『情熱大陸』で取り上げられていた落合陽一。
それがきっかけで読んだという人も少なくないのが『超AI時代の生存戦略 〈2040年代〉シンギュラリティに備える34のリスト』
シンギュラリティ。言い換えると、技術的特異点。
これは人工知能(AI)が人間の能力を超えることで起こる出来事のこと。
この超AI時代に備えるために書かれた本が本書だ。
ただ、内容は学術的なものではなく、ビジネス書で。起業家の方など、今後のビジネスを考える上でもとても参考になるだろう。
もちろん、会社員の方などでも、とてもヒントになる点は多い。
すべて同意でなくとも、きっと参考になる点はいくつもあるはず。今、話題の本なので、ぜひ読んでみてほしい。
印象に残ったポイント
仕事と仕事以外で差別化した価値を
仕事と仕事以外の両方で差別化した人生価値を生み出し続ける方法を見つけたものが生き残る。
「ワークとライフの関係性は完全に『バランス』ではなくなった。これからは『ワーク”アズ”ライフ』、つまり差別化した人生価値を仕事と仕事以外の両方で生み出し続ける方法を見つけられたものが生き残る時だ」
「報酬とストレス」という捉え方のほうが象徴している。
「『ワークとライフ』の対比でとらえるのではなく、『報酬とストレス』という捉え方のほうかわ今の働き方を象徴している」
パイを広げるのが超AI時代の生存戦略
パイを奪い合うのではなく、どうやって広げるかが、超AI時代の生存戦略。一人ひとりがブルーオーシャンの考え方をしなくてはいけない。
「例えば、研究でもそうだが、全員が全員、違う方向に向かってやっていることに広い視点で意味がある。音楽業界でも、ミュージシャンそれぞれが何かで1位をとっていれば、全員が違う方向を向いて全体の多様性が担保されていくわけだ。
それらは、特定の一個のパイを奪い合うのではなく、パイをどうやって広げようか、と言う超AI時代の人間全体の生存戦略だ」
「今まで言われてきた、『自分が自分の道を行く』と言うのは、競争の上でどういうキャラクターをつけていくかという話だった。
しかし今、その意味では全くなく、これからやらないといけない事は、全員が全員、違う方向に向かってやっていくことを当たり前に思うということだ。つまり、誰も他人の道について気にかけていない、そして自分も気にしていないと言うマインドセットだ。
今、この世界で他人と違うのは当たり前で、他人と違うことをしているから価値がある。もし、他人と競争をしているならば、それはレッドオーシャンにいるということだ。つまり、競争心を持つというのは、レッドオーシャンの考え方で、そうではなくて一人一人がブルーオーシャンの考え方をしなくてはいけない」
他人のことを気にかけないので「べき論」で語らないこと。
「すべての生活スタイルに置いて私たちの人間性を許容し、人間とはこうあるべきと言う「べき論」で語らないことが、超AI時代においては重要なことだと思う」
ただし、自分にとっての価値基準などが重要になってくる。
「そういう時代に、私たちがどんな信仰心を今までと違って持たないといけないのだろうか。『〇〇と言う価値は自分にとってどういう意味があるんだろう?』や、『入ってくる情報は、自分の価値基準に照らし合わせたら、どういう意味なんだろう?』と言うことを全員が全員、別々に考えなければいけないわけだ。
その時に、自分にとっての価値基準や絶対的なもの=信仰がないと、自分の指針が取れない状態になってしまう。それは、どのように価値を決定していいかが判断できないからだ」
自分が何が好きなのかを考えることがオリジナリティを高める
これからは好きなことで価値を生み出すスタイルに転換することが重要。自分が何が好きなのかを考えることが、機械よりオリジナリティを高めることにつながる。
「今の社会において、雇用され、労働し、対価をもらうと言うスタイルから、好きなことで価値を生み出すスタイルに転換することの方が重要だ。それは余暇をエンタメで潰すと言う意味でなく、ライフにおいても戦略を定め、差別化した人生価値を用いて利潤を集めていくと言うことである」
「自分が『個体として何が好きなのか』というのを考えていくことが大事で、理想的には、趣味性が高いものを仕事にして、それによってストレスフリーで多くの利潤が発生している、という状況が継続性があって望ましい。それは非合理なモチベーションからはじまるから、機械よりもオリジナリティが高いことができる」
「仕事になる趣味を作ると言うことがワークアズライフの生存戦略では重要なので、『仕事になる趣味を3つくらい持ちましょう』と勧めたい」
好きで何かを続けるには3つの要素が重要
好きで何かを続けるには次の3つの要素が重要だという。
- ギャンブル
- コレクション
- 快楽
ギャンプル性はその言葉どおり、競馬のように結果がどちらに転ぶかわからないもの(起業もまさにそういうところがある)。コレクションは集めること。カメラのレンズを集めたい、などだ。そして、心地良さは五感に訴えるもの。映画を見て楽しいとか、音楽を聴いて心地良いなど。
ここはビジネスを創る意味でも参考になる視点だと思う。
「好きで何かを続けていく理由を細かく分解すると、そのギャンブル、コレクション、快楽のどれかに誰もが集約されるだろう」
自分の仕事の中に報酬はあるか
報酬が明確でないと続かない。報酬を明確にして、遊びとして人生をデザインする。
「あなたが何の報酬で喜ぶのかということを意識して、『遊び』として人生をデザインしていくことが、これからの時代のキーワードになるだろう。そしてこれは、どれが正解と言うことではなく、人それぞれ違っている。どれか1つに限定するのではなく、すべての要素が混ざっているパターンもいいだろう。
僕の場合であれば、研究をするということが好きな理由が3つある。評価が得られる、でギャンブル的ということと、作品が残るという点でコレクション的と言うことだ。また、成果自体が見える時は自分の五感の新たな体験として感じることができて快感的でもあるので、実は3つが適度に合わさっていると言える。
そして逆に考えれば、あなたのやっていることに継続性がないのであれば、この3つの要素がどれか欠落しているのではないだろうか」
「報酬がわかってないと継続性がなく、続けることができず、それ限りになってしまうのでワークアズライフとしてキャリアデザインが難しい」
「一度、自分の仕事の中で『どこがギャンブル的なのか』ということを意識してみるのを勧めたい。これはストレスと報酬関係を明記するということだ」
出口をベースに入り口を考える
当然になってくるのは出口をベースに入り口を考える思考。そして、それをつなぐのはインターネット。
「『〇〇と言う出口があるから、出口をベースに入り口を考える』と言う思考が当然になってくるだろう。出口に繋ぐ能力は、インターネットがもたらしてくれ、その中間のコミニケーション能力と言うのも、インターネットによって強くなっていく。そうすると、プロダクトを作る入り口の時から、出口のことを考えながら進めるということが当たり前になっていてそれがすごく重要になってくる。
それを今の世の中では、『マーケティング能力』と呼んでいて、市場が何を必要としているかを人間が考えるわけだ。市場は何をしているかと言うと、需要を持っている。その需要に対して供給を与える能力だ」
開発とマーケティングは同義になってくる。本の話ではないけど、ここは本当に重要なこと。
「どういう利便性があるのかということを開発の段階から考える方が、作ってしまったものを得るより効率的だし、シンギュラリティ以降は必然的に開発自体とマーケティングは同義になってくる」
プレゼンベースで仕事をすることにもつながる。
「論文と会議でのプレゼンを合わせて『学会発表』は行われるのだが、という事は論文もプレゼンの1種と言うことだ。そういうすると、プレゼンテーションとしての論文を考えたときに『じゃあ、そのプレゼンで言いやすいものを作ろう』、もしくは、『言いやすいようにこの実験をしよう』と言うように組み立てる癖がつく。
つまり、プレゼンベースで仕事をすると、非常に仕事の効率が上がる。情報伝達のための仕事設計になるので、非常に効率的で重要なことだ。まず、プレゼンすることを先に考えて、スカスカのプレゼン資料を作ってから仕事を始める、と言う進め方は非常におすすめである。スカスカのプレゼン資料をどう埋めたらいいか、と言う順番でプレゼンベースに仕事をしたほうがはかどるだろう」
おぼろげに押さえておくのが知識の持ち方
理想的な知識の持ち方はおぼろげに押さえるということ。しっかりと押さえるのではない。調べればわかるのだから。
「ざっくりとフックがかかっている状態、おぼろげにリンクが付いているような状態が、これからの時代に理想的な知識の持ち方だと思う。これはどういう仕組みで、思いつきから実装までたどり着くことができるのか、ということさえ押さえておけば、個別の細かいところはその都度調べたりしながら作ることができるということだ」
書籍内容
- 「情熱大陸」(TBS)「朝まで生テレビ」(TV朝日)「おはよう日本」(NHK)出演で話題沸騰!!
- ワークライフバランスに変わる、「ワークアズライフ」という概念とは何か。
- 「朝日新聞の読書欄」「サンデー・ジャポン」「ビジネスブックマラソン」などで紹介!
- 大好評「4.5万部」を突破!!
- 〝現代の魔法使い〟と称され、今、世界でもっとも注目される日本人科学者、書き下ろし最新刊です。
「人間らしさ」という思考停止をやめて、〝これからやるべきこと〟をちゃんと読み解く1冊。ギャンブル性のあること、コレクション的なこと、単純に心地いいこと…人間にとってエモいこと以外は、すべてコンピュータにやらせればいい――。
未来への漠然とした不安。「何をしたらいいかわからない」という人たちに向け、超AI時代の「生き方」「働き方」「生活習慣」を気鋭の若手学者が丁寧に描き出します。
従来の「ライフとワーク」ではなく、「ストレスと報酬で人生を組み立てる」など、著者ならではの新たな切り口&視点が盛りだくさん。
著者情報
落合陽一
メディアアーティスト、博士(学際情報学/東京大学)。筑波大学助教・デジタルネイチャー研究室主宰。Pixie Dust Technologies .Inc CEO。VRコンソーシアム理事。一般社団法人未踏理事。電通ISIDメディアアルケミスト。博報堂プロダクツフェロー。1987年東京都生まれ。筑波大学メディア芸術を学び、情報学群情報メディア創成学類を卒業。大学院ではヒューマンインターフェース工学およびコンピュータグラフィクスを専攻し、東京大学学際情報学府にて博士号を取得(学際情報学府初の早期修了者)