「隠喩」で売るセールスマン
某上場企業でトップセールスだった人(男性)がいました。
モノを売ることに優れた才能をもっていて、その高い成果から、その企業で営業を統括する立場になり、後に別の企業を立ち上げ、その企業は上場を果たしました。
今回はまさにその男性(現在は経営者)の高いセールス技術の1つ。「隠喩」について、話していきます。隠喩というのは比喩の一種。
比喩というのは
「物事を説明するとき,相手のよく知っている物事を借りてきて,それになぞらえて表現すること」
ここでパワフルなのは「相手のよく知っている物事」を借りてくるということです。
相手のよく知っている物事につなげるからこそ、よく理解されるようになるわけです。
この比喩の方法の1つ。とても強力なのが「隠喩」です。この「隠喩」についてはこれまであまり話したことがないかもしれないです。
今回はまさに「売れる!トップセールスマンも使う『隠喩(メタファー)』の技術」という話をしていきます。
ぜひ、ここでマスターし、あなたのビジネスのセールス強化、もしくはプロモーション強化に使っていただければと思います。
トップセールスマンも使う「隠喩」の方法
隠喩とは
隠喩で代表的なものといえば、
「ペンは剣よりも強し」
「ペン」と「剣」など、通常は2つのものを組合せて、強力な「たとえ」話のメッセージを届けるものです。
やや堅苦しいですが、正式には次の意味です。
修辞法の一つで、たとえを引いて説明するのに、表現上では「の如(ごと)し」とか「ようだ」のようなたとえの形式になっていないもの。
どういうことか、というと。比喩の場合。通常は
「彼女は天使のようだ」
などと「~のようだ」と、明らかに「たとえ」て説明していることを明確にします。ですが、「隠喩」は違います。「~のようだ」を使わずに説明します。次のようになります。
「彼女は天使だ」
「~のようだ」という言葉を省いたことで、より強力なメッセージになります。
先ほどの「ペンは剣よりも強し」もそうです。「ペンは剣よりも強いようだ」などと比べると、圧倒的にパワフル。比べれば、すぐに実感できると思います。
隠喩の目的
冒頭で話した某上場企業の優れたセールスをしていた人(現在は経営者)は、まさにこの比喩を使ってきました。一例を上げると、次のようなものです。
「ネットビジネスは導火線」
ネットでのビジネスは導火線のようなものです、という意味。
前提として、ネットビジネスを展開している人にしか、響かないので。一応、説明をすると、ネットでの広告を展開した場合、次のようになります。
広告→広告をクリック→サイト→サイトのコピーを読む→サイトでのエントリー(登録や購入)……など。
広告を露出し、そこで注意換気し、クリックをしてもらい、サイトにつなげる。そのサイトで注意喚起し、離脱させないように文章(コピー)を読ませ、信用を高め、様々な訴求をし、エントリー(登録や購入)につなげる。
1つひとつのプロセスがほんのわずかうまくいかないだけで、失敗してしまう(火が消える)、まさに導火線のようなものです、ということを説明したわけです。
長々と説明すると上記の話ですが、それを「ネットビジネスは導火線」と一言で説明してきました。
シンプルで短く、インパクトも強烈です。僕はその言葉を顧客(広告主)として聞いたいのですが、かなり響きました。
この切れ味ある一言で、彼の印象が大きくなり、後に多額の発注をすることにつながっていきます。
ここまで説明した内容でわかるように、隠喩の目的は次の2つです。
- 長い説明を省き、一言で説明してしまう。
- 聞き手(顧客)の感情を強烈に揺さぶる。
膨大な情報が氾濫する現在の状況で、長ったらしい説明は読まれないし、読み手(聞き手)に届きません。当然、長い説明だとそれを読まないといけないので、顧客の感情にも届きづらい。それらを全て払拭できるのが
「隠喩」
なわけです。隠喩は「のようだ」などと曖昧ではなく、「ネットビジネスは導火線」と言い切るので、パワフルだし。長ったらしい説明を一言にまとめ、顧客の心にイメージしやすく、感情に届いてしまうわけです。
パワフルな隠喩を創る5つのステップ
今からあなたの商品を売るための「パワフル」な隠喩の作り方について、説明をしていきます。ここからが勝負です。
「隠喩ってたとえて表現することなんだ」
大抵はここまでで終わりです。
でも、これだけ知っていても、それでは使いこなすことができません。無意味な学術的なことを知ったというだけで終わってしまいます。
なので、ここからが本番。次の5つのステップをおさえてください!
- 伝えたいメッセージを明確にする。これは簡単です。先ほどの例でいうと、
「ネットビジネスは広告を露出し、そこで注意換気し、クリックをしてもらい、サイトにつなげる。そのサイトで注意喚起し、離脱させないようにコピーを読ませ、信用や、様々な訴求をし、エントリー(登録や購入)につなげる。1つひとつのプロセスがほんのわずかうまくいかないだけで、失敗してしまう」
こうしたことを明確にする、ことです。伝えたいメッセージが明確でなければ、隠喩も何もないです。まずはこれを定めることです。
- メッセージから主語を特定する。1で決めたメッセージでいえば、主語は「ネットビジネス」になります。
- 伝えたいメッセージに合致するワードを特定する。ここは慣れが必要になりますが、伝えたいメッセージに合致する「ネットビジネスは◯◯」などの◯◯の部分のワードを考えるわけです(先ほどの例では「導火線」です)。
- 断定で言う。表現をより強めるため、「~のようだ」などではなく、断定でメッセージを作る。
「ネットビジネスは導火線のようだ」ではなく、「ネットビジネスは導火線」とする。 - テストする。実際に使う前に誰かに試してみることをオススメします。
特に実際にコピーなどとして使う場合は、意味が通じるかは確認した方がいいです。できれば、テストすることです。
隠喩がパワフルな理由
あなたが展開する商品のことを顧客はあまり知りません。
その商品のことを「買いたい」と思うほどに知っていれば、買っているのだし。知らないから、売れないわけです。
そのためにあなたの商品はもちろん、わかりづらい、あなたの業界のことなどを、顧客がよく知っている知識とリンクさせるわけです。
相手(顧客)が日常的に使っている言葉や知識とリンクさせると、一気に理解しやすくなり、記憶しやすくなるわけです。
これだけでライバルより圧倒的に有利になります。
隠喩の具体例
隠喩の具体例はいくらでもあります。
- 「ペンは剣よりも強し」
- 「彼女は天使だ」
- 「彼の肉体は鋼」
- 「金は力」
など、非常にダイレクトだし、パワフルなものが多いです。
「金は力」なんて、「お金というのは……」と長々とその力を説明するものと比べると、明らかに違ってくるわけです。
効果的な隠喩が見つけたら……
隠喩は力です。
ライバルに先んじて顧客の心にメッセージを届ける大きな力。
なので、効果的な隠喩を見つけたら、次の3つを意識してください。
- 隠喩は力。その力を早めに発揮するため、提案の前半。できれば、最初にその隠喩を使うこと。
- あなたのビジネスの商品やサービス、プロモーションで最大限、効果的に利用することです。
- 今回は主に言葉を用いる隠喩について説明をしてきましたが、そのメッセージを強化するイメージ(画像)を用いるのも効果的です。
参考:隠喩についての参考情報
マーク・アンドルースらはその著書で次のように語っています。
「メタファー(隠喩)には間接的な言葉や画像が使われるので、言葉の持つ意味通りの(メタファーのない)主張よりも、矛盾に気づくのに時間がかかる。
それは、1つにはシンタクティック・インディターミナシー(シンタックス上の不確実性)と呼ばれる概念によるものだ。言葉の持つ意味通りの主張は、論理的な構成と明確な根拠を必要とし、詳細に分析されやすい。
しかし、イマジネーションやメタファーのシンタックス(統語法)は、それほど明確ではなく、事実を表現するためのものでもない。したがって、不確実性が強いということだ。
私たちは、たんにメタファーとして提案されたつながりやストーリーに対しては、簡単に反論することができない」
まとめ
- 隠喩(メタファー)は「長い説明を省き、一言で説明」し、「聞き手(顧客)の感情を強烈に揺さぶる」
- パワフルな隠喩を創る5つのステップ
1.伝えたいメッセージを明確にする。
2.メッセージから主語を特定する。
3.伝えたいメッセージに合致するワードを特定する。
4.断定で言う。
5.テストする。
あなたへの質問
- あなたのビジネスでは、効果的に隠喩を活用しているだろうか。使っていない場合、あなたの商品を販売する上で、効果的に隠喩を活用できないだろうか。
- パワフルな隠喩を創る5つのステップを使っているだろうか。
- 提案前半(最初の方)で隠喩を使っているだろうか。
- あなたのビジネスの商品やサービス、プロモーションで最大限、効果的に利用しているだろうか。