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『敗者のゲーム』
今回、紹介するのは全米では累計100万部を超えているといわれる超ロングセラーの本『敗者のゲーム』
この本は第6版が2015年1月24日発売と全く新しい本じゃない。それでもAmazonで常にランキング上位。今日現在でも総合で150位。株式投資で1位と凄まじい。
投資の世界ではまさにバイブルで。ビジネス書でいうと『7つの習慣』などに該当するのかな。とにかく絶賛されている。
この「起業マーケティング」は独立起業をした人たちに役立つ話をする場所だから、投資は違うんじゃないの、と思われるかもしれない。でも、投資の良書は独立起業、いやビジネス全般に役に立つ。
正直にいえば、僕自身、マーケティングに携わった初期の頃に成果を上げることができた要因のひとつは投資家ウォーレン・バフェットを研究したことにもある。
そもそも多くの人が知っている、「マーケティングの名著」はマーケティングをやる人なら誰もが読んでいる。初心者であっても読んでいるだろうし(もちろん、その読み方は全く違うだろうけど)。そこから先が勝負になってくる。
その意味では僕の場合、投資の本は本当に使えた。
だからこそ、名著『敗者のゲーム』をご紹介したい。
まずは、独立起業にも応用可能な範囲をポイントとしてご紹介したい。
本当にオススメの本なので、ぜひ読んでみてほしい。
印象に残ったポイント
プロの試合は勝者のゲーム
プロのゲーム(試合)は勝者のゲームだ。
テニスでいえば、プロの試合はとても攻撃的。
サービスは全力で打ち、相手にボールを全く触れさせなかったり、ラインぎりぎりのコーナーを攻めるストロークだったり、叩きつけるスマッシュもブチかます。
そうした勝つための技術、言い換えると、「勝者の技術」が優れている方が勝つ。
こうした勝者の技術がカギとなるゲームを「勝者のゲーム」という。
素人の試合は敗者のゲーム
ところが素人は違う。同じテニスの試合でも素人は高度ではない。
すぐにネットにボールをひっかけたり、(全力どころか、そもそも)サービスが入らなかったり、ボールがラインの外に出ていったりとミスの連続。
ひたすらミスが続く試合だ。こうした試合で勝つにはどうすればいいのか。
「ミスしない」こと。
下手に攻撃的にならず、相手のコートにボールをただ返す。それだけに集中すれば良い。そうすれば、勝手に相手がミスをする。
著者はこう語る。
「戦争では他の条件が等しければ、戦略上のミスを最少にする側が勝つ」
「『プロは得点を勝ち取るのに対し、アマはミスによって得点を失う』……私たちはミラクル・ショットを決めようとするのではなく、とにかくミスの少ない、確実なテニスを目指すべきである」
アマの場合、株式投資でミスしない投資というのは「市場平均株価(インデックスファンド)」を買うことだという。
「インデックス・ファンドは、面白くもおかしくもないが、とにかく結果が出る」
敗者のゲームのため、考えた方がいいこと
投資のために次のことを考えた方がいいという。
Who:誰が投資するのか? 貴方が全て選択するんですよね?
Why:なぜ投資するのか? 当初の目的は何だったのか?
What:何をするのか? 売買を繰り返したいのか?
Where:どこに投資したいのか?日本だけじゃないですよね?
How:どうやって投資するのか? 手間暇かけたいのか?
最重要課題をとらえ、ミスを最小にしていく。
難しいことが重要なこととは限らない。エキサイティングなのも違う
「難しいことが重要なこととは限らない。医学において、手を洗うことは、ペニシリンに次いで命を救う方法だった」
「年老いた(old)パイロットや、向こう見ずな(bold)パイロットはいるが、向こう見ずで長生きしたパイロットはいない」
「投資は娯楽ではない。責任である。投資家は本来『エキサイティング』なものでもない。むしろ原油の精製や、ICの製造工程のように、じっくり腰を据えて取り組むべき作業なのだ。投資がエキサイティングになってきたら、何かが変だと思う必要がある」
「投資家が避けるべきリスクを次に列挙しておこう。『むやみにがんばりすぎる』」
補足:この本が参考になる理由
独立起業も投資と同じで多くの人が参加するゲーム。しかも全てが完璧な技術をもつ「勝者」のゲームではなく、様々な点が不十分。
マーケティングひとつとっても、ある程度の成長を遂げている起業家のビジネスでさえ、商品が不完全だったり、サイトが不完全だったり、プロモーションの精度が甘かったり、PDCAが回っていなかったり、様々なところが不完全。そう彼ら自身も言う。完璧な起業家同士の戦いではない。
そんな状況にあるにもかかわらず、ミスを見ずに、ホームランばかりを狙う「勝者」のゲームをやろうとしても、様々な面でミスをしているから、うまくいかない。
冒頭のテニスの話と全く同じ状況を実際よく目にする。
1つの考え方を知るという意味でとても役に立つと思う。
書籍情報
全米累計100万部を超えるロングセラーの最新版。
プロ・アマ問わず幅広い投資家に向けたメッセージとして、時代を超えて読み継がれる運用哲学のバイブル。
資産運用に、難しい専門知識はいらない
激しく変動するマーケットに右往左往する。当初立てた投資計画を無視して、高値で買って安値で売ってしまう――投資家ならこういった経験があるはずだ。この先、ITバブルやリーマンショックに遭遇したら、どうすればよいのか? 本書はそのための現実的な対応を教えてくれる。
投資で成功するというのは、難しい証券分析などの専門知識や経験を身につけることではなく、ましてや短期的に市場を出し抜こうとすることでもない。市場平均利回りを上回る(=市場に勝つ)ことがきわめて難しくなった今、最も簡単かつ結果の出る方法は、インデックス・ファンドを活用することである。
「運用機関が市場に勝てないのであれば、市場を忠実に反映する、つまり市場に負けないインデックス・ファンドへの投資を考えてみるべきだ。インデックス・ファンドは、面白くもおかしくもないが、とにかく結果が出る。 (中略) 長期的にはほとんどのポートフォリオ・マネジャーを打ち負かしている」 (本書より)
「投資に成功するということは、値上がり株を見つけることでも、ベンチマーク以上の成績をあげることでもない。自ら取りうるリスクの限界の範囲内で、投資目的達成のため、市場の現実に即した長期的な投資計画、特に資産配分方針を策定し、市場の変動に左右されず、強い自己規律の下で、その方針を守ってゆく、ということだ。そうすれば、長期的な経済成長に見合う各資産の長期リターンを獲得することができる」 (訳者あとがきより)
著者情報
エリス,チャールズ
1937年生まれ。イェール大学卒業後、ハーバード・ビジネス・スクールで最優秀のMBA、ニューヨーク大学でPh.D.取得。ロックフェラー基金、ドナルドソン・ラフキン・ジェンレットを経て、1972年グリニッジ・アソシエイツを設立。以後、30年にわたり代表パートナーとして、投資顧問会社や投資銀行などの経営・マーケティング戦略に関する調査、コンサルティングに腕を振るう。2001年6月代表パートナーを退任。現在、ホワイトヘッド財団理事長