『行動経済学まんが ヘンテコノミクス』
表紙には『ヘンテコノミクス』と意味がわかりづらいタイトルがあるので、書店で見ても、何の本なのか、わからない本。
正直、ここは本当にもったいないという感じがします。
でも、よく見ると、小さく『行動経済学まんが』とある。そう、この本は行動経済学について、マンガで説明したものです。
マガジンハウスの雑誌『BRUTUS』。
この本は興味深い特集があって、時々読んでしまう(ちなみに、最新号は『日本一の「手みやげ」はこれだ!』で、こちらも興味深い)。
『行動経済学まんが ヘンテコノミクス』はその雑誌『BRUTUS』で連載されていたコーナーを単行本化したもので、掲載された23話を中心に載った本。
行動経済学というと、比較的難しいものが多い。最近、人気なのでいうと、2017年にノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラー教授の『実践 行動経済学』などがあります。
でもそうした本よりもはるかにわかりやすい。何しろ、マンガです。人間の経済行動のヘンテコな部分をマンガでおもしろおかしく描いている。
しかも、面白いだけでなく、ためになるわけです。
表紙を開くとこんなことが書いてあります。
「今までの経済学は、『人間は必ず合理的な経済行動をするもの』
という前提で構築されてきました。ところが普段の私たちは、それでは説明できない非合理なふるまいを多くしています。
行動経済学とは、従来の経済学では説明しきれない人間の経済行動を人間の心理という視点から解明しようとする新しい経済学です」
続けて、目次を少し見てみましょう。
目次
- 「塀のらくがき」の巻―アンダーマイニング効果 報酬が動機を阻害する
- 「安売り合戦」の巻―感応度逓減性 母数によって変わる価値
- 「スーパーおしの」の巻―フレーミング効果 枠組みを変えると価値が変わる
- 「保母さんの名案」の巻―社会を成立されているのは、モラルかお金か 罰金による罪の意識の軽減
- 「心の会計」の巻―メンタル・アカウンティング 心の中で、お金の価値を計算する
- 「はじめての背徳」の巻―アンカリング効果 基準が判断に影響を及ぼす
- 「 」の巻―代表性ヒューリスティック 私たちはイメージに囚われる
- 「欲しいけど買えない」の巻―おとり効果 選択肢を生み出すことで、市民権を得る
- 「占い師のアドバイス」の巻―新近効果 終わり良ければすべて良し
- 「れんが亭の新メニュー」の巻―極端回避性 ついつい真ん中を選んでしまう〔ほか〕
冒頭の「塀のらくがき」。
ビジネス書なのに「塀のらくがき」というタイトルからして、ありえない。
でも、きっとこの話一つでも興味深いと思うはず。マンガ好きはもちろん、ビジネス書好きもぜひ、読んでみてください。
ヘンテコノミクス
印象に残ったポイント
人はなぜそれを買うのかが漫画でわかる
「人は、なぜそれを買うのか。
安いから、質がいいから。
そんなまっとうな理由だけで、人は行動しない。
そこには、より人間的で、深い原理が横たわっている。
この本には、その原理が横たわっている。
漫画という娯楽の形を借りながら」
アンダーマイニング効果
「報酬が動機を阻害する。……自分が好きでしていた行動(内発的動機)に報酬(外発的動機)を与えられることによって、やる気がなくなってしまう現象のことを、『土台を壊す・弱体化させる』という意味の言葉である『アンダーマイニング効果』と呼んでいます」
極端回避性
「私たちは、三段階の選択肢を提示されると1番上や下という極端な選択を回避して出来るだけ無難な選択、つまり真ん中の選択肢を選ぼうとする傾向があります」
おとり効果
「1つでは価値が決められなかったものでも、おとりとして新しい選択肢が追加された途端(中略)どちらの選択肢が良いかという問題に置き換わってしまうことがあるのです」
ヘンテコノミクス
書籍内容
人は、なぜそれを買うのか。安いから? 質がいいから?
否。そんなまっとうな理由だけで、人は行動しない。
そこには、より人間的で、深い原理が横たわっている。
この本には、その原理が描かれている。漫画という娯楽の形を借りながら。
雑誌「BRUTUS」の人気マンガ連載「ヘンテコノミクス」がついに単行本化!
いま最も注目されている学問「行動経済学」の理論がサザエさん並みに楽しく学べる唯一無二の一冊です!
人間の経済行動の真実とその理論がなんと漫画になってあなたに迫る!
全23話にのぼる「行動経済学まんが」から内容をいくつか紹介
◎「塀の落書き」の巻――報酬が動機を阻害する
悪ガキたちの塀の落書きに悩む家の主が行った秘策とは?
――【アンダーマイニング効果】
◎「れんが亭の新メニュー」の巻――真ん中を選ぶ心理
仲良し三人組がよく使うレストランに新メニューSが登場。
その時から、彼女たちはいつも避けていた高いランチAを選んでしまうのであった。それはなぜ?
――【極端回避性】
◎「保母さんの名案」の巻――罰金による罪の意識の軽減
お迎えの時刻を守らない母親たちに対して保育園が取った対抗策は
なんと逆の結果を招くのであった。
――【社会を成立させているのは、モラルかお金か】
全23話の「行動経済学まんが」に加え、書き下ろしコラム「発見! こんなところにヘンテコノミクス」、ユニークなビジネス用語解説マンガ「ヘンテコミック」など愉快痛快でためになるページが次から次へと連続登場!
発見と驚きがクセになる「行動経済学」の決定版。読むと、新しいあなたがそこにいます。
ヘンテコノミクス
著者情報
佐藤雅彦
1954年、静岡県生まれ。東京大学教育学部卒。慶應義塾大学教授を経て、現在、東京藝術大学大学院映像研究科教授。ゲームソフト『I.Q』(ソニー・コンピュータエンタテインメント)や、慶應義塾大学佐藤雅彦研究室の時代から手がけている、NHK教育テレビ『ピタゴラスイッチ』、『考えるカラス』など、分野を越えた独自の活動を続けている。平成23年芸術選奨受賞、平成25年紫綬褒章受章
菅俊一
1980年、東京都生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科修了。多摩美術大学美術学部統合デザイン学科専任講師。人間の知覚能力に基づく新しい表現を研究・開発し、社会に提案することを活動の主としている
高橋秀明
1964年、石川県生まれ。アートディレクター・クリエイティブディレクター。金沢美術工芸大学商業デザイン学科卒業後、電通に入社。数々の広告キャンペーンを担当。ACC賞、朝日広告賞、毎日広告デザイン賞、日経広告賞、NYADC賞、スパイクスアジアなどを受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)