「返報性の原理」を効果的に使う3つの方法
新宿伊勢丹の地下1階。
そこはデパ地下で、地方の美味しいものなども売っていて、九州や北海道のものなど、とにかく美味しい。
歩いていると店員さんが「これ、美味しいから食べて」と美味しそうなモノを差し出してきます。そこで気軽に受け取ると、避けられない感情に追い込まれます。
実はこの「試食」がとてもパワフルな力をもつわけです。
試食している最中あたりから、僕の頭の中では食べ物を味わうのと同時に、「この商品を買った方がいいのかな」とか「買わないといけないかな」とか「何だか、断りづらいな」などという考えが頭の中に浮かんできます。
試食し終わった後、「じゃあ」と何事もなかったように、そこから立ち去ることが気楽にできないわけです。
こうした状況はまさに「返報性の原理」のケースです。
「返報性の原理」または「返報性の法則」自体は様々なところで語られていたりするので、マーケティング経験者はもちろん、営業経験者などにとっては基本的なことだと思いますが。
正式には次の意味です。
「人は他人から何らかのモノを受け取った(もらった)時に、そのお返しをしなければならないという感情を抱く。こうした心理のこと」
ビジネスの世界ではこの「返報性の原理」を使うケースが多くて。見込み客などに小さなモノを与えることで、見返り(売上)につなげるわけです。
多くの場面で語られていて、多くの人に知られている「返報性の原理」。
本当の意味で、その力、使い方を理解すれば、あなたのビジネスにもかなり大きな力を発揮するものですが。
実際にはうまくいかないことがある
実際にはそうではないわけです。
「返報性の原理」を使ってみてもそう簡単ではないし。「うまくいかない……」と悩んだりしたことがある人は数多くいるはずです。
これが使いこなせるのであれば、ビジネスは一気に楽(ラク)になります。それくらい、この「返報性の原理」は非常にパワフルなものなわけです。
今回は「返報性の原理」で実際に成果を上げるには何が必要で、何に注意していく必要があるのか。これについて、話していきます。
返報性の原理で実際に成果を上げる方法
返報性の原理の真の力
「返報性の原理」というのは「人は他人から何らかのモノを受け取った(もらった)時に、そのお返しをしなければならないという感情を抱く。こうした心理のこと」。
つまり、「与えるともらえる」。
そんな感じで理解している人が多いと思います。
ただ、その程度のことを知っていても、「返報性の原理」を使うことはできないし、その実際の力も理解できないです。
なので、まずは「返報性の原理」。その真の力を考えてみてください。
先ほどのデパ地下(伊勢丹の地下)の状況をイメージしてみてください。あの状況で結局、僕は買わなかったのですが、それでも「気まずい」思いをする状況に追い込まれました。
この「気まずさ」を感じるということは実は凄まじいことです。
僕に試食品を渡した「店員さん(売り手)」は僕の知り合いではありません。その人の名前どころか、顔も見たことがない赤の他人。
しかも、こちらからお願いして、試食させてもらったわけではなく、相手から「美味しいから、食べて」とお願いされて、食べたわけです。
ある意味では向こうの希望の「試食」を叶えてあげた。相手の要望どおり、食べたのですから。
ところが、この赤の他人の突然の無理なお願いに対して、(もらったのだから今度は)「買わないと悪いかな」と「義務」を感じしてしまうのです。
些細な試食で、です。
小さなモノなのに大きく返そうとする
しかも、凄いところは小さなモノをもらったとして、同じ小さなモノでお返しをするのではなく、それ以上のお返しをしたりするところです。
具体的には伊勢丹のデパ地下でチーズの小さな欠片をもらい、それに対してお返しに数千円のチーズを買わないといけないと思ってしまうわけです。めちゃくちゃパワフルです。
まとめると、主な力は次の3つです。非常にパワフルなわけです。
- 赤の他人にも買わせる力
- 買わないといけないと義務さえも感じさせる力
- 些細なモノをもらっただけで、大きなお返し(買い物)をさせる力
返報性の原理が通用しないケース
これだけパワフルな返報性の原理ですが。
実際には「返報性の原理」が効果的に機能しないことがあります。
あなたが「与えているのに、うまくいかない」と考えている場合は、見込み客が「価値」を感じていない可能性が高いです。
顧客自身が価値を感じていなければ、そもそも受け取ったとは思っていないわけです。当然、返そうとも思わないわけです。
顧客が「価値」を感じるものを受け続けていたら、確実にどこかで反応が高まってきます。
返報性の原理:与えるモノ
返報性の原理で与えるモノは何でもいいです。
ただ、先ほど話したとおり、重要なことは相手が「価値」を感じるということです。「価値」を感じていれば、何でもいいわけです。
モノでなくてもいい。
笑顔を与える、挨拶をする、などでもいいし。
クリップやペン、ポストイットなどの小さなモノでもいい。
スターバックスでカフェラテなどをオーダーすると、そのカップに「thank you」などというメッセージが書かれていることがありますが、あのような数秒程度で書けるメッセージでさえも、顧客は喜び、場合によっては「こんなことを書いてもらった。嬉しい」などとSNSに投稿したりするわけです。
本当に些細なことでもいいわけです。
僕の経験でいうと、10年ほど前にある人に雑誌の切り抜きを送ってもらい、「橋本さんのお役に立つ内容ではないでしょうか?」と連絡をいただいたことがあるのですが。そうしたことでも10年もの間、記憶に残るほど「価値」を感じるわけです。
そうした情報でもいいです。
決済権者だった時の話
以前、僕は企業のマーケティング部の決済権者で、大手広告代理店などから、とても厳しい担当者と言われていたのですが。そんな風に「厳しい担当者」と言われていたにもかかわらず、先ほどのように営業マンから情報をいただいたりしていると、「返報性の原理」からか、「返さないとな」「買わないとダメかな」と考え始めるわけです。
そして買わなければならないと「義務」さえも感じるわけです。
返報性の原理が逆に働くことを避けること
返報性の原理はこれだけパワフルなのですが。実は逆に働くと非常に怖いものです。
返報性の原理は「他人から何らかのモノを受け取った(もらった)時に、そのお返しをしなければならないという感情を抱くもの」。
逆にいえば、他人から嫌なものを受け取った時に、その嫌なお返しもしようとするということです。顧客が不満に思うような嫌なことをしてしまうと、顧客はそれを返してきます。
そうならないように注意をしてください。
「返報性の原理」を効果的に使う3つの方法
では、ここで「返報性の原理」を効果的に使うための3つの方法を紹介します。
- 顧客に価値を感じさせることが何よりも重要
「価値」を感じさせることができなければ、返報性の原理は機能しない。まずはそこに注力をすること。 - モノを販売する前に返報性の原理が機能するレベルにもっていく。
返報性の原理が機能する関係性になって、はじめてモノが売れますし、買わなければならない義務を感じるわけです。モノを売る前に返報性の原理を活かした関係性にすることです。 - 最後に返報性の原理を信じ、顧客に「価値」を提供すること。
「返報性の原理」は赤の他人の突然の依頼にもある種の義務を感じさせるほどパワフルです。機能すれば、効果的であることを信じること。
まとめ
- 返報性の原理は赤の他人の突然の依頼にも「買わないといけない」と義務を感じさせるほどパワフル
- 返報性の原理を効果的に使うための3つの方法
- 顧客に価値を感じさせることが何よりも重要
- モノを販売する前に返報性の原理が機能するレベルにもっていく
- 最後に返報性の原理を信じ、顧客に「価値」を提供すること。
あなたへの質問
- あなたのビジネスでは返報性の原理を効果的に活用しているだろうか。
- (活用している場合)顧客に価値を感じさせるモノを提供しているだろうか。