価値がない商品を売る男
男は起業し、地方都市のある街でビジネスを立ち上げていた。
出身大学は優秀と言われるところだったし。大手の有名企業にも楽に入社できた。仕事も順調。若くして昇進、管理職に。部下は10名を超え、周囲から評価されていたこともあって、自信があったのだろう。「起業して成功する」と会社を辞め、ビジネスを立ち上げた。
そう、うまくいかなかった。
……売上が上がらず、潰れるかもしれないと、追い詰められた状況の中、心の奥底では「価値がない」と思う商品を「無理にでも顧客に売る」と決意した。
でも必死にセールスしても、顧客にほとんど相手にされなかった。
あなたは価値がないモノを売ることができるか?
この状況であなたはどうするだろうか?
あなたが起業していて、本音では自身の商品を「価値がない」と思っている。顧客の役になど立つ商品ではない、と。
あなたは「売る」ことはできるだろうか。
「会社が潰れる状況だったら、何としてもやるしかない」
そう答えるかもしれない。追い詰められたら、やるしかないでしょ、と。
役に立たないものを無理やり売れる人は少ない。
でも甘くない。これまで僕は17年間マーケティングに携わり、多くの起業家に会ってきたけど。
強く感じるのは「顧客の役に立たない商品」と本音では思いつつ、無理やり売れるほどウソがうまい人、顧客にバレない人はそれほど多くない。
リアルの営業で売るなら、目の動き。声。表情などが、自信のある営業マンとは天と地ほどに違ってくる。ネットで販売するにしても、サイトやSNS上で伝える言葉がどこか変わってくる。顧客に違和感を感じさせてしまう。
マジメな人は精神的に追い詰められる
悪人にはなりきれないマジメな人がそんなセールスを続けると、精神的に参ってくる。
より顧客にバレ、結果、ますます売れない。自信のなさは続き、表情に現れ、売れない状況は延々と続く。さらに精神的に追い詰められ、キツい状況に陥っていく。
なので、あなたがマジメな人なら、心の底から言いたいのは、そうなる前に「顧客に役立っている」感覚をもてる商品をとにかく用意してほしい。
毎月開催している『商品開発実践講座』ではまさにそのためにやっている。売れる商品、自信がもてる商品があれば、ビジネスを根本から変えられる。
実際に顧客に役立つものを提供すること
実際に顧客の役に立つものを提供する。
顧客の役に立っている。この世の中を良くしている、という感覚は本当に重要で。明確にその感覚を感じていれば、「何のために仕事をやっているのか」も明確になってくる。
「役に立っている」と本気で思えれば、売込みの感覚はなくなり、いいモノを勧めている感覚になる。ビジネスが圧倒的にやりやすくなる。
創業時の売上が上がらない、成長できない状況でも、途方にくれてしまうことは少なくなるし、長期間働き続けることだって苦もなくできる。
お金だけでは続かない
売上が上がり、お金が得られればいいわけではない。
人に役立っている感覚が強まれば、強固な自信が得られるようになる。
「世の中のある部分で革命的なことをしたい」という大きな目標をもつ起業家でも、スタートは最初の1社、最初の1人から始まる。一人ひとりの人に役立つという些細な感覚からスタートする。
前回の記事『起業は偉大なことをしなければならないのか「些細なことから始めたらどうなるのか」』でもご紹介した西洋最大の哲学者の一人、アリストテレスの言葉のとおりに、だ。
「革命は些細なことではない。しかし、些細なことから起こる」
「役に立っている」と思えない人はまず1人からスタートすることだ。
自己肯定感が低い場合
特に自己肯定感が低い人は、他人の評価が必要。
あなたが「自分は自己肯定感が低い」と感じているなら、ここは特に重要なのだけど。
自己肯定感の低い人は、他人の評価さえ得られば、途端に自信が高まる。他人から「ありがとう」と感謝され評価されれば、ますますやる気になってくる。
そういう人こそ、役立つものを用意し、顧客に「ありがとう」「助かったよ」と言われるものを提供していくことを意識することだ。
まずは一人。そして、その一人に満足してもらったら、次の1人と増やしていく。そうして、あなたのビジネスは次第に強固なものへと変わってくる。
まずは目の前の一人のお客さまに「ありがとう」と言ってもらうことからスタートする。
まとめ
スティーブ・ジョブズは次のような言葉を語っている。
「多くの場合、人が優れた仕事をできないのはそのように期待されていないからなんだ。でも、そのお膳立てさえしてやれば、人は自分の限界以上の仕事をやり遂げる」
顧客に役立つという話とは少し違う表現だけど。
顧客に「ありがとう」と期待されることで、人は自分の限界を超えた優れた仕事ができるようになる。
あなたへの質問
さて、最後にあなたへの質問だ。
- あなたは目の前の顧客に役立つ商品、サービスを売っているだろうか?心の底からそれを感じているだろうか。
- 顧客の役に立たないモノを無理に売っていないだろうか?もし、そうなら、役立つも商品を売ることはできないだろうか。