ファンベース
マーケティングというと、多くの人が悩んでいるのが「集客」。特に新規顧客に対して、どのようにプロモーション(販促)を仕掛けていくのか、と悩んでいる人は非常に多い。
ただ、今回ご紹介するのは新規顧客ではなく、既存顧客。特にファンに対してどう展開すべきか、基本的なことが語られている本でタイトルは『ファンベース』
2018年2月6日に発売され、2月23日時点では総合447位と比較的売れている。
マーケティングを実践で取り組まれている人にとっては説明は不要だと思うけど。
現在はとにかく情報が氾濫していて、注意喚起自体の難易度が高まり、新規獲得が困難になってきている。
逆に既存顧客は既に顧客情報を把握しているし、大抵の企業が売上の大半を既存顧客が生んでいる。まさにパレートの法則(80:20の法則)のとおり、2割の顧客が7割から8割の売上を生んでいる。
その意味で既存顧客のコア(核)ともいえるファンをベースに展開していくのはとても重要なのだ。ここのところをまだ実践していない人にとって、基本をおさえる意味でオススメの本だと思う。
まず、ファンとは何か。本書ではこう書かれている。
「ファンとは『企業やブランド、商品が大切にしている「価値」を支持している人』と、この本では定義したい。支持する価値はいろいろだ。
『まさにこの機能が欲しかったんだ!』かもしれないし、『このメーカーの味、とても好みに合う!』かもしれない。(中略)そういう、企業やブランド、商品が大切にしている価値にグッとくる人、その価値にワクワクし喜ぶ人、その価値を支持し友人に薦める人。それが『ファン』である」
そのファンをベースにして売上を上げていく考え方がファンベースという。
「ファンベースとは、ファンを大切にし、ファンをベースにして、中長期的に売上や価値を上げていく考え方だ」
では、ポイントについて説明していきたい。
ポイント
少数のファンが売上の大半を生んでいる。
冒頭でも少し話したとおり、これはマーケティングの基本的な事項で、確実に押さえるべきこと。
- 少数のファンが売上の大半を支えている。
- 今いるファンを大切にして彼らのライフタイムバリューを上げていくことは、収益の安定・成長に直結する
短期施策(短期キャンペーン)は困難になっている
現在は膨大な情報量が氾濫しているなどして、注意喚起が困難になっている。
- 世の中に情報も商品もエンターテインメントも溢れかえりすぎていて、キャンペーンがとても届きにくくなった
- そんな過酷な環境下でたまたまキャンペーンが話題になっても、一過性かつ瞬間風速的で、あっとういう間に忘れ去られてしまう
- 人口急減により、顧客自体が物理的に減り続ける(中略)
- おまけに、超高齢化や少子化、独身増加などで、新規顧客の獲得はどんどん困難になっていく
ファンの支持を強める3つのアプローチ
共感を強くし、愛着を強くし、信頼を強めていくことでファンの支持を高めていく。
『共感』を強くする
- ファンの言葉を傾聴し、フォーカスする
- ファンであることに自信を持ってもらう
- ファンを喜ばせる。新規顧客より優先する
『愛着』を強くする
・商品にストーリーやドラマを纏わせる
- ファンとの接点を大切にし、改善する
- ファンが参加できる場を増やし、活気づける
『信頼』を強くする
- それは誠実なやり方か、自分に問いかける
- 本業を細部まで見せ、丁寧に紹介する
- 社員の信頼を大切にし『最強のファン』にする
ファンの支持をより強める3つのアップグレード
ファンの支持をさらに強めていくため、熱狂される存在、無二の存在、応援される存在になっていく。
『熱狂』される存在になる
- 大切にしている価値をより前面に出す
- 「身内」として扱い、共に価値を上げていく
『無二』の存在になる
- 忘れられない体験や感動を作る
- コアファンと共創する
『応援』される存在になる
- 人間をもっと見せる。等身大の発信を増やす
- ソーシャルグッドを追求する。ファンの役に立つ
ファンベースを中心とした「全体構築」の3つのパターン
全体構築の3つのパターン。
- 中長期ファンベース施策のみで構築する
- 短期・単発施策でファンをゼロから作っていくところから始める
- 中長期ファンベース施策を軸に、短期・単発施策を組み合わせていく
書籍内容
人口急減やウルトラ高齢化、超成熟市場、情報過多などで、新規顧客獲得がどんどん困難になっているこの時代。
生活者の消費行動を促すためには「ファンベース」が絶対に必要だ。それは、ファンを大切にし、ファンをベースにして中長期的に売上や価値を上げていく考え方であり、その重要性と効果的な運用の方法を、豊富なデータや事例を挙げて具体的に紹介する。
著者説明
佐藤尚之(さとう・なおゆき)
1961年東京都生まれ。
(株)電通にてマス広告、ネット広告、コミュニケーション・デザインなどに携わった後、2011年に独立。
現在はコミュニケーション・ディレクターとして、(株)ツナグ代表。コミュニティ主宰・運営として(株)4th代表。著書に『明日の広告』、『明日のコミュニケーション』(ともにアスキー新書)、『明日のプランニング』(講談社現代新書)等多数。