『ジョブ理論』
『破壊的イノベーション論』の提唱をした、有名なクレイトン・M・クリステンセン教授。
彼の最新刊が『ジョブ理論』
2017年8月1日に発売され、およそ2ヶ月が経ったところ。今でもAmazonのビジネス書カテゴリーTOP100には入っている(10月12日現在だと20位前後)。
やはり、売れている。
さて、この本の『ジョブ理論』、原題は“COMPETING AGAINST LUCK”。意味は、イノベーションが成功する理由を知れば、運任せに努力しなくていいということ。
その『ジョブ理論』を一言でいうと……。
「人は何らかのジョブ(用事、仕事)を片づけるために製品(サービス)を雇う」
だからこそ、そのジョブがうまく片づいたのであれば、次に同じジョブが現れた時にその製品を雇うし、うまく片づかないのであれば、雇わない、解雇してしまうというわけ。
「私たちが商品を買うということは基本的に、なんらかのジョブを片づけるために何かを「雇用(ハイア)」するということである。その商品がジョブをうまく片づけてくれたら、後日、同じジョブが発生したときに同じ商品を雇用するだろう。ジョブの片づけ方に不満があれば、その商品を「解雇(ファイア)し、次回には別の何かを雇用するはずだ」
こう説明していくと、単に当たり前のことを言い換えているように思うかもしれないけど。実際にはかなりの部分が明らかに違ってくる。
この本のポイント
ジョブとは何か
では、まずジョブとは何か、上記のようにざっくりいえば、「用事」「仕事」ということになるが、
「ある特定の状況で人が遂げようとする進歩」
つまり、顧客の目的は製品(サービス)そのものの購入ではなく、顧客自身の「進歩」だということ。
片づけるべきジョブ
だからこそ、「片づけるべきジョブ」を見極めることが必要になってくる。
例としてあげられるのが「マックシェイク」の話。
消費者は「通勤の暇つぶし」というジョブのために、マックシェイクを購入していた。つまり、売上を上げるためには「粘土」を高める必要があった。
その他の例でいうと、「A地点からB地点に移動する」というジョブのために車を買う。「思い出を残す」というジョブのためにカメラを買う。
機能だけではない。感情や社会における影響まで考えて、片づけるべきジョブを見極める必要がある。
雇用してもらうためには解雇が必要
製品(サービス)を雇用してもらうには、それまでのものを解雇させる理由が必要になってくる。
「A地点からB地点に移動する」のにすでにクルマを使っているのであれば、新たにそのジョブのためにもう一台クルマは雇わない。このようにそれまでのものを解雇させる理由が必要になってくる。
カテゴリーに囚われるな、ジョブを中心に考えろ
ここで重要なのは、「A地点からB地点に移動する」と考えると、クルマだけではなく、タクシーもあるし、場合によっては電車だってありえる。
クルマのカテゴリーだけでは、競合も顧客のことも間違えてしまう。
顧客でいうと、セグメンテーションもそうだ。
特定のクルマを購入するセグメンテーションで考えると、大きくズレてしまう。
「30代男性、家族構成は…」と顧客データを見て、その層に合う改善策を見つけても正しい方向性が見つからない。ジョブを中心に考えていくことだ。
ジョブに最適な製品を提供する
顧客はジョブのために製品(サービス)を雇う。
つまり、ジョブ以外の不要なものをつける必要はない。あくまでもジョブにフォーカスすることだ。
だからこそ、ジョブ理論で成功した後のことをこう語っている。
「最初の成功をもたらしたジョブへのフォーカスを失う。さらにまずいことに、多くの顧客向けに多くのジョブを片付けようとすれば、顧客は混乱し、本来、ジョブを片付けるのに適さないプロダクトを雇用し、のちに苛立ってそのプロダクトを解雇することになる」
書籍内容
なぜあの商品は売れなかったのか?
世界の経営思想家トップ50(Thinkers50)連続1位。
「破壊的イノベーション論」の提唱者、クリステンセン教授による、待望の最新刊!
顧客が「商品Aを選択して購入する」ということは「片づけるべき仕事(ジョブ)のためにAを雇用(ハイア)する」ことである。
『イノベーションのジレンマ』の著者による、21世紀のベスト・オブ・ビジネス書!
イノベーションの成否を分けるのは、顧客データ(この層はあの層と類似性が高い。顧客の68%が商品Bより商品Aを好むetc)や、市場分析、スプレッドシートに表れる数字ではない。
鍵は「顧客の片づけたいジョブ(用事・仕事)」にある。
世界で最も影響力のある経営学者クレイトン・クリステンセンが、人がモノを買う行為そのもののメカニズムを解き明かす、予測可能で優れたイノベーションの創り方。
・顧客が商品を買うこととは、片づいていない「ジョブ(用事・仕事)」を解決するために何かを「雇用」することである。
・ビッグデータは顧客が「誰か」を教えてくれても、「なぜ」買うのかは教えてくれない。
・数値化できない「因果関係」にこそ、成功するイノベーションの鍵がある。
・自社製品も他社製品も買っていない「無消費者」を取り込め。
[本書で取り上げる事例]
イケア、ゼネラルモーターズ(GM)、サザンニューハンプシャー大学、プロクター&ギャンブル(P&G)、エアビーアンドビー、アマゾン他
<著者について>
クレイトン・M・クリステンセン
ハーバード・ビジネス・スクールのキム・B・クラーク記念講座教授。9冊の書籍を執筆し、ハーバード・ビジネス・レビュー誌の年間最優秀記事に贈られるマッキンゼー賞を5回受賞。イノベーションに特化した経営コンサルタント会社イノサイトを含む、4つの会社の共同創業者でもある。「最も影響力のある経営思想家トップ50」(Thinkers50、隔年選出)の2011年と2013年の1位に選出。
タディ・ホール
ケンブリッジ・グループのプリンシパルで、ニールセン社のブレークスルー・イノベーション・プロジェクトのリーダーを務める。様々な企業に対し、イノベーションのプロセスを改善する支援をおこなっているほか、〈エンデバー〉など新興市場の経営トップに緊密な指導を提供している。
カレン・ディロン
ハーバード・ビジネス・レビュー誌の元編集者。著書にNYタイムズ・ベストセラー『イノベーション・オブ・ライフ』(クリステンセン他と共著)。コーネル大学・ノースウエスタン大学メディル・ジャーナリズム学院卒業。2011年、アショカ財団によって世界で最も影響力のある女性のひとりに選出される。
デイビッド・S・ダンカン
イノサイト社のシニア・パートナー。イノベーション戦略および成長に関する先進の研究者兼アドバイザーとして、企業経営者に対し、破壊的変化を導き、組織を長期的な繁栄が可能な体質に変換する指導をおこなっている。デューク大学卒、ハーバード大学で物理学の博士号取得。