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なぜ、顧客管理をするのか
あなたはこの記事を読んでいる。
ということは「顧客管理」に興味があるはず。
既に「顧客管理」に取り組んでいるか。これから「顧客管理」に取り組もうとしているか、でしょう。
では、「なぜ顧客管理に取り組むのか?」
この問いにハッキリ答えられますか?
なぜ、顧客管理をするのか。
あなた自身、もしくはあなたの会社の中でしっかり考えてから、顧客管理をしないと、顧客管理という手段自体が目的になってしまって、結局何一つ意味のないものになってしまいます。
そこで、今回は「顧客管理」のために特に必要なことをお話します。
僕のことを知らない人のために(本題に入る前に)
顧客としての経験は10年
現在、僕はマーケティングのコンサルタントとして、大手企業やベンチャー企業などの顧問などをさせていただいていますが。会社員時代は大手金融機関グループのある事業のマーケティングの責任者(課長)をしていました。
期間にして約10年。マーケティングの部署にいて膨大な予算(コスト)を管理していたこともあり、多くの優秀な企業、営業マンを相手にしていたわけです。
ずっと「顧客(発注者)」をやってきたわけです。
そこでの経験から「売る立場」と「買う立場(顧客:発注者)」の2つの視点からこの『SELPRO』ではお話しています。
マーケティング経験は17年
マーケティングの経験は17年(独立後も含め)。マーケティングの中で特に大切にしているのは顧客への「リサーチ(調査)」で。
17年もの間、ひたすらに顧客のことを分析し続けてきました。
『リサーチ』については書籍を出していています。『顧客の「本音」がわかる9つの質問』という本で、Amazonのマーケティング部門で1位なども獲得していました。
(売り切れの時などは、中古本でもプレミアが付くときもあり、10,195円などで売られていることもある本です)
そして、現在は大手企業からベンチャー企業の顧問などをさせていただき、商品開発やプロモーションなどで「顧客価値」を高めるためなど、リサーチや分析を続けています。
売るための顧客管理
では、本題に入ります。
顧客管理の目的は何か。
顧客に続く「管理」という言葉が悪い感じがするんですよね。
「管理」なんて、何だか事務的な感じで。とりあえず、「顧客を管理しておこうぜ!」という感じにしか、聞こえない。
あなたの会社が大手企業などで顧客サービスなどをする部署であれば、「管理」や「満足」などが目的の場合もありますが。それ以外、たとえば、中小規模の企業やベンチャーであれば、まず「売上」を上げるために顧客を管理したいはず。
「いや、一応管理しておきたいだけ……」というケースもあるかもしれないけど、明確でない場合は、ここは「売上」としておいてください。
つまり、次のイメージです。
顧客管理→売上増(より売れるようにする)
「顧客管理をすることで、もっと売れるようにしようぜ!」
って感じです。
ここで目の前のPCで、「顧客管理」と検索して、ザッと様々なページを見てみたけど、顧客管理のシステムなどを販売する企業や人たち(マーケティングの専門家ではない人たち)が書いているからなのか、「マーケティングに使える」などと書かれているのだけど、どう使えるのかがサッパリわからない。具体的な説明がないケースがほとんど。
なので、今回、お話します。
目的は「売上」。
「売る(売上を上げる)」ためです。
そのために必要なことを順に話していくので、順をおって、押さえてもらえれば、必要なことは理解でき、実践できるようになります。
……と、その前に「顧客管理」というのはどういう意味なのか。
まずはそもそも顧客管理って何?
そう、まずはこれを説明しないといけないですね。
実用日本語表現辞典にはこうあります。
「顧客情報と、顧客ごとの売上高や購入頻度などの販売データなどを統一的に管理すること。多くの場合は、専用の顧客管理システムや顧客管理ソフトなどを使って行われる。しばしば、顧客関係管理(CRM:Customer Relationship Management)のことも指す」
ここにもあるようにシステムを使うせいか、「顧客管理」というと、すぐにツールやシステムをイメージしてしまうのだろうけど、実際は次のとおりです。
顧客管理とは?
カンタンにいうと、
「顧客管理」というのは、顧客との関係を良くするために情報を管理、分析することを言います。
先ほどの目的、「売上」につなげていえば、顧客との関係を良くするように情報を管理、分析し、(満足度を高めていき)、売れるようにすることです。もっといえば、継続的に買ってもらい、長期的な売上につなげていくことです。
顧客管理→売上増(さらにいえば、長期的な売上に)
売るための顧客管理
目的が売上増(さらにいえば、長期的な売上)ということであれば、顧客管理をする上で、まず次のことを押さえなくてはなりません。
「顧客が『買う』行動を取りやすくなるのはどういう状況なのか」
「買う」行動を取りやすくなるのはどういう状況なのか。それがわかっていなければ、いかに顧客管理をしていくのかが見えないわけです。
そこで大切なのが「慣性の法則」です。
慣性の法則
「慣性の法則」というのは物理の法則。
マーケティングは物理などと共通する部分が実はあるんです。ビジネスとはいっても、この世界で起きることなので、当然といえば、当然ですが。
この「慣性の法則」は物理学の基礎ですが、ここで必要なのは次のことです。
モノは止まっていれば、止まり続けようとするし。動いていれば、動き続けようとする(ただし、摩擦があるので、結局は止まりますが)。
なので……。
「静止しているモノを動かす時に最初にかなり特別な力を必要とします」
このことを「慣性の法則」といいます。
マーケティングも同様なんです。
「行動してくれる人は行動してくれる。止まっている人はなかなか動き出さない」
これはとても重要な基本原則なわけです(どんな書籍にも書かれていない話なので、調べてもどこにも載っていないですが)。
具体的にいうと、「買う」行動をとった人はまた買ってくれる可能性が高いし。「資料請求」など何らかのアクションをとった人も(「買った」人よりは確率は落ちますが)「買う」可能性が高いわけです。
つまり、
- 購買行動(買う行動)
- 資料請求などの反応行動
そうした行動については管理していく必要があるわけです。
買っていない人の方が買うのでは……。
もしかしたら、
「買っていない人の方が買うのでは?」
と考える人もいるかもしれません。
マーケティング経験が浅い人の中にはそういう風に考える人もいるかもしれませんが、そうカンタンではないです。
「慣性の法則」を考えることです。
止まっていれば、止まり続けようとする。買っていなければ、買わない状態を続けようとするわけです。
それに……。
買っていない人というのは、買っていないわけです。
あなたのケースで考えてほしいのですが、あなたが買っていない商品や企業は、その多くの企業や商品を知らなかったり、信じていなかったりするわけです。
だから、買っていない。
その(買わない状態の)あなたが、その企業から買うか、商品を買うか、ということです。
その状況は次のとおり。
- 企業を知らない
- 商品を知らない
- 企業を信じていない
- 商品を信じていない
- 企業から買っていない
- 商品を買っていない
……という状況なわけです。
「慣性の法則」のことなど知らなくても、まず買う確率は高くはないわけです。
買った人たちは
買った人たちについていえば、買ったその瞬間はその企業のことも商品のことも知っているし、それらを信じているわけです(買う程度には)。
購入後に不満な経験をする可能性はもちろんありますが。買った瞬間については次の状況です。
- 企業を知っている
- 商品を知っている
- 企業を信じている
- 商品を信じている
- 企業から買っている
- 商品を買っている
上記の多くに該当していて、はるかに買ってくれる確率が高い。
実際、マーケティングの現場で、一度買った人たちにダイレクトメールなどを送る方が、一度も買っていない人たちに送るより、はるかに買う確率が高い。商品や価格にもよりますが、10倍どころではないケースだってあります。
だからこそ、次の行動を管理していくことが必要なわけです。
止まっていなくて、行動をしてくれた顧客は買ってくれる確率が高い顧客だからです。
- 購買行動(買う行動)
- 資料請求などの反応行動
行動は常に有効か
「顧客の行動については未来永劫、有効か」というとそんなわけではないです。
忘れますよね。
ランチなどだって、そうですが、一週間前に何を食べたのか、だって忘れてしまうわけです。
なので、「行動した期日」が重要なわけです。
カンタンにいえば、1ヶ月前に資料請求をした顧客と、2年前に資料請求した顧客では反応(レスポンス)が格段に変わってくるわけです。
当然、最近の顧客の方が反応率は高いです。
顧客情報
「顧客管理」にはどんな情報が必要なのか、と考えたことがあると思いますが、これまでの話のとおり、売るために最も重要なのは「行動履歴」なわけです。
「購買行動」や「(資料請求などの)反応行動」ですね。
それ以外は顧客の属性情報ですね。
- 名前
- 生年月日
- 年齢
- 性別
- メールアドレス
- 電話番号
- 住所
- 職業
……など情報を増やそうと思えば、それ以外にもいくらでもありますが。後で話しますが、多すぎても問題です。
最低限必要な情報をいえば、「売る」ためなので、コミュニケーションがとれる情報ですね。
コミュニケーションがとれる情報があって、「行動履歴」などの情報があれば、購買行動などがあった人に重点的にプロモーション(販促)を仕掛けることができるし、リピートで購入してもらうように何かを仕掛けることもできるわけです。
(あとは個々の顧客を特定するための「顧客ID」ですね。これは必須項目です)
リアルかネットか
「リアル(ネット以外のオフライン)かネット(オンライン)か、によって、顧客管理は変わるのか」と疑問をもつような人もいます。ですが、基本的には同じです。
同様に顧客の「行動」を重視してください。
ただ、リアルかネットかによって、顧客の行動やプロモーション(販促)自体が変わってきますよね。
もし、自分たちがメールマガジンからの売上が極めて大きいのであれば、メールアドレスが重要になってくるし、訪問する営業が強いのであれば、メールアドレスよりも住所や電話番号などが重要な情報になってきたりする。
行動だって、リアルは訪問日で、ネットはメールの配信日だったりするわけです。
ただ、いずれにしても顧客の「行動」が重要です。
顧客データを分析し、様々な手を打つ
顧客管理のデータを分析し、その行動履歴を用いれば、様々な手を打つことができます。
十分に購買意欲の高い見込み客もわかるし、購買意欲が低い見込み客もわかるわけです。
一度買ってくれた人たちであれば、(もう一度買ってくれる確率が高いので)営業マンが訪問したり、ダイレクトメールを展開するコストだってかけられる。
逆に、一度も買ったことがない人たちにはそんなコストをかけると採算割れしてしまう。なので、Eメールを配信するだけにしようか、などとなるわけです。
行動履歴を中心に、費用対効果などを検討しながら、売上げアップを狙えるようになるわけです。
避けるべき5つの問題
これまでお話したとおり、顧客管理は有効に用いれば、とても強力なものです。
顧客管理を正しく行えば、売上を大きくし、さらに長期的な売上につなげていくことだってできるわけです。しかも、かなりの確率で、です。
顧客管理→売上増(さらにいえば、長期的な売上に)
ただし、問題があります(これまでお話した問題もあるし、そうでない問題もある)。
そのため、ここで避けるべき5つの問題をご紹介します。
問題1.顧客管理の目的が明確ではない。
「顧客満足」や「関係性」などと指標にしづらいものを目的にしないことです。
そうではなく、「売上」など、明確に数値化できる目的のために実施すべきです。
たとえば、「関係性(を良くする)」などという曖昧な目標とした場合。
そのような数値がわかりにくいものは評価もできないし、それに関わる自分や社員たちのモチベーションだって上がらない。
目的は明確にすることです。基本的には目的は「売上」にすることです。
問題2.膨大な項目にしない
顧客管理をする情報の項目を決める時、「アレもいれよう。コレも入れよう」などと増やしてしまうケースもあります。ですが、それでは分析も複雑になり、わけがわからないものとなります。
さらに、顧客管理がリアル(営業)のためのもので、営業マンが情報を入力するようになっていたら、最悪です。
項目が多いと、入力の手間が増えるので、いい加減に入れるようになります。結果、使えないデータになってしまうわけです。
問題3.分析不可能なほど少ないデータにしない
特に重要なのは「行動履歴」です。
売上を上げるためには、顧客に関する属性情報だけでなく、行動履歴が必要になります。ここは確実に必要になってきます。
そうした情報を省いてしまうほど、少ないデータにしないことです。
問題4.誤ったデータにしない
常に最新で正しい情報が必要です。
誤ったデータは、どれだけ分析しても、誤った結果しかでません。
(担当者が適当に入力するなどして)一部が誤ったデータになったら、もはや一部だけの問題ではありません。
どの一部が誤っているかがわからなくなるし、分析しても意味がないものになっていきます。データは常に新しく、正しくしていくことです。
問題5.放置しない
顧客データを管理するといっても、ただ傾向を見るだけの企業もあります。
そうではなく、それを分析し、何らかの実行に移すことです。
ここが不明の場合は専門家にお願いした方がいいです(疑問がある場合は遠慮なく、お問合せください)。
ただ、データを見て、「そんな傾向があるのか」という程度だったら、売上を増やすことにはつながらないし、顧客管理など意味がないです。
というわけで、上記5つの問題点を避けるようにしてください。
売上を上げる2つのポイント
ポイント1.顧客の購買行動を深く分析すること
購買行動をとった顧客のことを分析することが基本です。彼ら彼女らに共通する特徴は何か、です。特に……
- 顧客が最も購入した商品/サービスは何か(価格はどの程度か)
- 顧客が購入する頻度はどの程度か
- 顧客が購入し続ける期間はどの程度か
これらは基本です。ですが、これがわかるだけでも、見込み客や顧客に対して、どのように展開すればいいかが見えてくるわけです。
明らかに売上は変わってきます。
ポイント2.購入段階時点以外を見ること
顧客が購入する段階。
その時点で何をすればいいかは誰でも知っているし、そこは世の中の全ての企業、全てのビジネスマンが集中して対応するところ。
「クレジットカードが必要です」とか「申込書が必要です」など。そんなことはどの企業でも、誰であっても真剣に対応する。
問題なのはそれ以外。具体的には、
- 購入前のプロセス
- 購入後のプロセス
そこを顧客管理の視点から特に見ていくことです。
大抵の場合、そこが手薄になっています。逆にいえば、そこに売上を伸ばすチャンスがあるわけです。
購入前の「資料請求などの反応行動」はどのような状況だったのか。
購入後に展開したプロモーションなどはどのような状況だったのか。
その結果、どのようなリピート(購入)などがあったのか。
まずはそれらから見ていくことです。
まとめ
正しく顧客管理を行えば、売上、利益を増やすことにつながります。
僕は17年マーケティングに取り組んできましたが、顧客のことを分析しなかったら、売上を上げ、利益を上げていくことはできませんでした。
本当に強力なものです。ぜひ、取り組んでみてください。
「顧客」については以下のページが読まれてます!
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顧客、マーケティングについての質問など
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