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影響力の武器 戦略編
名著『影響力の武器』シリーズの比較的新しい1冊。
マーケティング関連の本を様々読んできたけど、『影響力の武器』はその中でも圧倒的に優れた本。とにかく素晴らしかった。
今回、ご紹介する本はそのシリーズの「戦略編」だ。
表紙には「小さな工夫が生み出す大きな効果」とある。
ひと工夫することが、その状況を劇的に変える、ということを伝えている。
本書では全53の技術が紹介されていて、それによって「小さな工夫が生み出す大きな効果」を得られる。
帯には
- 「選んでほしい」選択肢を、相手に選ばせる手段
- 予約や約束のすっぽかしを防ぐのに効果的な方法
- 社員のやる気や仲間意識を高める、簡単な手立て
- 恋人や友達に喜んでもらえる、プレゼントの選び方
53どころか、少し紹介されているのを見ただけでも読みたくなるはず。
印象に残ったポイント
スモール・ビッグ
影響力の武器を用いたちょっとした工夫が大きな結果の差異をもたらす。
大型の被害をもたらすハリケーンがきたとき、米国ではかつてジェーンなど、女性のファーストネームをつけることが多かった。だが、近年は男女平等の考えから、男性の名前も用いられる。ところが、問題が起こる場合もある。
人間は同じファーストネームの名前に「好意(親近感)」をもち、とても関心を示す。同じファーストネームではなくても、頭文字が同じ名に関心を持ち、義捐金を送る傾向が高まる。
その意味で、Xabierなどというファーストネームは問題がある。「X」で始まるファーストネームの人間は極めて少ないからだ(義援金が少なくなる)
ファーストネームの最初の文字ですら影響力を持つ。もっと強力な「共通項」があると、さらに大きな影響を持つ。
大勢がすでにやっていると伝える
販売対象の顧客に(その他の)大勢が既に買っている、などとわかりやすく、正直に、正確に伝える。
「影響戦略の土台に据えるべきなのは、人々が自分の決定に影響を与えたと言っているものではなく、その人たちにして欲しいことを、その人たちと似ている大勢の人がすでにやっていると、わかりやすく、正直に、正確に伝えることなのです」
「企業の開発部門幹部が新製品の発表会に顧客を惹きつけたいなら、まずは最も来てくれそうな人たちに狙いを絞って招待してください。そうすれば、次に招待する人たちに対して、『すでにほかの大勢の方々から、出席のお返事をいただいております』と正直に言うことができます」
積極的に関わらせる
対象とする人に積極的に関わらせる
「私たちはほかの小さな工夫―患者が消極的にではなく積極的に予約の設定に関わるようになる工夫―の効果を検証しました」
「具体的には、次回の診察日時を患者が自分でカードに記入するよう、受付担当者に頼ませたのです。4ヵ月以上このやり方を試してみたところ、このやり方を採用したグループのすっぽかし率に、なんと18パーセントもの減少が見られました」
「最初のグループ(選択肢1つのグループ)は『秋のインフルエンザ予防接種を希望する場合は、チェックボックスに印をつけてください』とだけ言われました。
2つめのグループは、1つではなく2つの選択肢のどちらかを選ばせるようにしました(選択肢2つのグループ)。……
- 秋のインフルエンザ予防接種を希望します。
- 秋のインフルエンザ予防接種を希望しません。
その結果、能動的に選択を行ったグループでは、予防接種を希望する割合がずっと高くなりました(希望者は選択肢1つのグループで42パーセント、選択肢2つのグループで62パーセント)」
同意を数ヶ月後にすると、顧客が断る確率が減る
同意を先に伸ばすと、抵抗が減る。断る確率が減る。
「(インターネットのブロードバンド、ケーブルテレビ、携帯電話といった日常的なサービスの料金プランへの申し込みなどで)最も安くて魅力的なプランの契約は、しばしば契約日から1年半あるいは2年間破棄できないようになっています。
(中略)
その日から有効になる長期契約の話を聞いたときに、すぐ発生する具体的な負担を嫌ってプランを拒否する人もいるはずです。
ですが、もしこの契約が加入後3ヵ月経ってから有効になるとしたら、プランを拒否する顧客の数が減るばかりか、サービスを提供する側も顧客を3ヵ月長く押さえておけるというメリットがあります」
愛は形にした方が影響が強まる
プレートがハート型だとチップが多くなる
「チップの増額とキャンディーは、いっさい関係がないのです。
強く関係していたのは、勘定書きの上に載せたプレートの形でした。
客が知るよしもありませんが、プレートの形は3種類用意されていました――円形、四角形、そしてハート型です。プレートがハート型だと、円形だった場合より17パーセント、四角形だった場合より15パーセント、チップが多くなりました」
端数の価格提示は「根拠」を感じさせることができる
端数の価格には根拠があるに違いないと伝わる。
「メーソンたちはこう考えました。
端数のある提示額を示されると、人は相手が交渉の準備に時間と労力を費やしていると感じやすくなり、それゆえ、出してきた端数のある数字には、それを支持するしっかりとした根拠があると考えやすくもなる、というものです。
そしてこの仮説は、実験に続けて実施した調査とも一致しました。交渉が終わった後に参加者たちの認識を調べてみると、彼らには『買い手の若者は、かなりのエネルギーを費やして車の価値を調べていた』や、『彼が提示した値段には、しっかりとした根拠があったに違いない』といった意見に同意する傾向があったのです」
パワーに満ちた体験を書くと、採用率が高まる
パワーにフォーカスすると、パワーに満ちてくる。採用確率が高まる。
「分析結果が出たときにはっきりしたのは、パワーに満ちた体験を書いていた人たちのほうが、はるかに採用見込みが高かったということです。
これは、パワーに満ちた体験について書くという小さな行為で、結果が大きく変わることをきちんと実証しています。
……面接を受けた実験参加者のうち、作文を書かなかったグループで採用された人は半数にもなりませんでした。
また、パワーに欠ける体験を書いた人の採用率はたったの26パーセントでした。
これらの数字と比較して考えてもらいたいのですが、パワーに満ちた体験を書いた人の採用率は70パーセント近くにもなっていたのです」
書籍内容
世界中でロングセラーを続ける『影響力の武器』シリーズの最新刊。
「約束を守ってもらうのに効果的な方法とは?」
「相手に、選んでほしい選択肢を選ばせるコツとは?」
「目標達成に効果的な計画づくりとは?」など、
“小さな”工夫ながら“絶大な”効果をもたらすことのできる、53の“スモール・ビッグ”を紹介。仕事や日常生活に使えるヒントが満載!
原書名:THE SMALL BIG:small changes that spark big influence
著者情報
スティーブ・J. マーティン
作家、ビジネスコラムニスト、インフルエンス・アット・ワーク(UK)常務取締役。行動科学を公共部門・民間企業が抱える課題に応用したその研究は、BBCテレビ、タイムズ、ニューヨーク・タイムズなど世界各地の放送媒体および紙媒体で取り上げられている。また、ロンドン・ビジネス・スクール、ケンブリッジ大学ジャッジ・ビジネス・スクールなどの企業幹部用教育プログラム特別講師も務める
ノア・J. ゴールドスタイン
UCLAアンダーソン・スクール・オブ・マネジメント准教授。専門は、マネジメント論、組織論、心理学、医学。説得と影響力に関する研究と著述は、多くの一流ビジネス誌に掲載されており、その業績は、ニューヨーク・タイムズ、ウォール・ストリート・ジャーナル、ナショナル・パブリック・ラジオなどでも取り上げられている
ロバート・B. チャルディーニ
職業人生のすべてを影響力の科学的研究に捧げ、説得、承諾および交渉の分野のエキスパートとして国際的な名声を博している。社会心理学の名著『影響力の武器』の著者でもあり、その画期的な研究は、一流の科学学術誌、テレビ、ラジオ、そして世界中の企業や新聞で取り上げられてきた。アリゾナ州立大学にて心理学およびマーケティングの指導教授、また、インフルエンス・アット・ワーク代表も務める