入社日
今日4月3日は新入社員の入社日。
ぎこちないスーツ姿の新入社員らしき人を幾人も山手線などで見ました。彼らを見ていて、感じるのは、よく言われる。
「部下が育たない」
「人が育たない」
という言葉です。
その言葉はよく聞きます。「アイツはなんでダメなんだろう」と育たないのは、その人が悪いからだ、という感じに聞こえることもあります。
今回はその人材育成について、お話していきます。
松下幸之助の人材育成
そこでご紹介したいのが松下幸之助の人材育成です。
創業間もない頃、松下幸之助は従業員らにこう語っていました。
「松下電器は何をつくるところかと尋ねられたら……、
松下電器は人をつくるところです。
併せて電気器具もつくっております。
こうお答えしなさい」
それから随分と時が経ち、当時の心境を後年、幸之助はこう説明しました。
「当時、私の心境は『事業は人にあり』、つまり人がまず養成されなければ、人として成長しない人をもってして事業は成功するものではないという感じがいたしました。
したがいまして、電気器具そのものをつくることは、まことにきわめて重大な使命ではございまするが、それをなすにはそれに先んじて人を養成することでなくてはならない、という感じをしたのであります。
日常の製作の仕事をするかたわら、そういうことを感じまして、そういう話をさせたのであります。
そういう空気はやはりその当時の社員に浸透いたしまして、社員の大部分は松下電器は電気器具をつくるけれども、それ以上に大事なものをつくっているんだ、それは人そのものを成長さすんだ、という心意気に生きておったと思うのであります。
それが、技術、資力、信用の貧弱な姿にして、どこよりも力強く進展せしめた大きな原動力になっていると思うのであります」
松下幸之助のいう人材育成とは
「社員の大部分は松下電器は電気器具をつくるけれども、それ以上に大事なものをつくっているんだ、それは人そのものを成長さすんだ、という心意気に生きておったと思うのであります」
という部分に集約される。
単に技術力、営業力のある社員を育成すればよいわけではなく、自分たちの仕事の意義、社会に貢献するという企業の使命をよく自覚し、自主性と責任感旺盛な人材を育成すること。
社会人としての自覚をもち、経営の分かった人間を育てること。
それが松下幸之助がめざす人材育成だったわけです。
その人材育成こそが、技術、資力、信用のない状況からどこよりも力強く成長を遂げた大きな原動力だったのです。
参考:『松下幸之助 物をつくる前にまず人をつくる』
企業は社会の公器(こうき)
「企業は社会の公器(こうき)」
有名な松下幸之助の言葉。
この言葉が松下幸之助の人材育成の前提にもなっている。
企業は、たとえ自分が興した企業でも、世の人々がいて、世の人々が求めるからこそ、存在する公の機関、つまり、「公器(こうき)」と考えていた。
自分のモノではなく、公のモノというわけです。
そう考えると、企業の活動で人を使うことも、自分のコト(私のコト)ではなく、公のコトだと考えていたわけです。
そのことについてはこう語っていました。
「自分1個の都合、自分1個の利益のために人を使っているのではなく、世の中により役立つために人に協力してもらっているのだということになろう。
そしてそう考えれば、やりにくいことをあえてなし遂げる勇気も湧いてくる。
たとえば、人を使って仕事をしていれば、時には叱ったり、注意をしなければならないことも出てこよう。
ところがそういうことは、人情として、されるほうもするほうも、あまり気持ちのよいものではない。ともすればめんどうだとか、いやなことはしないでおこうということになりがちである。
しかし、企業は社会の公器であり、人を使うことも公事であるとなれば、私情でなすべきことを怠ることは許されない。信念をもって、世の中のために、叱るべきは叱り、言うべきは言わねばならないということになる」
自分のことではなく、公のため。人材育成もまさにそうだったわけです。
人材育成に関する名言
その他、松下幸之助が語る「人材育成」に関する名言を最後に2つほど、ご紹介します。
経営者の使命感がなければならない
「経営に対する経営者自身の使命感。そういうものがなかったら、人を育てようと思っても人は育ちません」
松下幸之助
任せることで成長する
「何でもあれこれ命令してやらせるのではいけない。それでは言われたことしかしない人ばかりになってしまう。やはり仕事は思い切って任せることである。そうすることによって、その人は自分でいろいろ考え工夫するようになり、その持てる力が十分発揮されて、それだけ成長もしてくる」