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『反脆弱性』
ビジネスをやっている人間。特に独立や起業をしている人なら「不安定(不確実)な状況に対応するにはどうしたらいいのか」と考えたことはあるだろう。今回、ご紹介する『反脆弱性』はまさにそれに答えた本なのだ。
多くの人は不安定を嫌がる。だからこそ、不安定さをなくすように、予測したりし、安定的な状況を求めていく。
もしくは、不安定なままでやっていけるようにする。まるでサーファーのように波に乗るようにしていくわけだ。
また、不安定さを利得に変えるという方法もある。それこそが本書が説明してくれる「反脆弱性」だ。
予測は捨て去れ
ただ、まずは1点言うと。不安定な状況に対応する方法としては「予測」があるけど、本書では予測など捨て去ってしまえ、と語っている。
不安定な状況、不確実な世界を乗り越えるために必要なのは、多くのデータを集め、最新のAIを駆使し、より正確に未来を予測することではない。
リスク研究の専門家である著者タレブは前著『ブラック・スワン』でもこう語っている。
「重大で希少な事象のリスクを計算したり、その発生を予測することはできない」
1000年に1度の大地震のような致命的に大きな影響を与えるイベントは、予想が難しいのではなく、本質的に予想が不可能なのだ。
『反脆弱性』の3つのポイント
物事の性質には3つあると言う
弱いもの、強いもの、変化を好むモノ。厳密には次のとおりだ。
- 変化に弱いモノ
- 変化に強いモノ
- 変化を好むモノ
たとえば、発明家は失敗をしても、その失敗を活かし、そこから成功につなげいく。
そのように、安定に反するモノ。いいかえると、不安定さを利得に変えている。変化を活かし、失敗を活かし、力に変えていく。それこそが反脆弱性。不確実性な世界で生き延びるアプローチといえる。
脆いところには近づくな
予測するのではなく、脆いところに近づかないことだ。脆いところは通常は安定しているように見えても不測の事態が生じたときは木っ端微塵に吹っ飛ぶ。
そんなところには近づかないことだ。
逆に小さな失敗が許容されて、一つの大きな成功を掴めば、それまでの失敗がチャラになるようなところに身を寄せればいい。
それならば、リスク確率などは関係ない。要はそのシステムの脆さ(あるいは反脆さ)に目を向けろ、という話である。
リスクを「計算」するとき、そこにさまざまな仮定が用いられる。その仮定に間違いや、許容できない精度の誤差が含まれれば、答えは役には立たない。むしろ有害だ。
でも多くは世界を理解し、それを制御できると考え、そういう計算をやってしまいがちだ。人が集まる組織もまた、世界を(あるいは社会を)計量可能なものとして制御しようとする。そして、0.00000000001%の確率(と計算された)出来事で見事に吹っ飛んでしまう。
倫理観の問題
もう一つは倫理観について。反脆さには、脆さが含まれる。全体を構成する一部が「壊れる」から、全体が新しくリストラクチャーされる。
つまり、細かい損があるからこそ、大きな得がある。小さな脆さがあるからこそ、全体の反脆さが得られる。
個人が小さな失敗を繰り返し、よりよい成功に近づくのはよい。しかし、他人に脆さを押しつけ、自分だけは反脆さを手にするのはどうか。国民に失敗のツケを支払わせながら、自分だけは巨額のボーナスを得る金融機関のCEOは、反脆さを手にしている。
まとめると
カンタンにいうと、世の中は変動性・不確実性があり予測不可能だということ。でも多くの人々は未来を予測しようとして安定性を求める。そしてそれに漬けこむ連中がいるのが今の時代。
その中で、基本的には予測できないことは下手に予測せず、変動性を好み(利得)、大きく負けない状態で、大きく勝つポジションを持っておく。
書籍内容
全世界騒然の大ベストセラー!
『ブラック・スワン』のタレブ最高傑作!!
経済、金融から、人生、そして愛まで――。
この不確実な世界で私たちがいかに生きるべきか、すべてに使える思考のものさし「脆弱/頑健/反脆弱」をもとに解き明かす。
◆「万に一つ」が、明日来る。世界最高の「知の巨人」が放つ最強の啓蒙書、ついに上陸
リーマン・ショック、アラブの春、地震と津波、そして原発事故……。昨日までは「ありえない」「絶対ない」と言われた事象が今日、現実のものとなる不確実な世界。
ではどうすれば、ビジネスから、政治、医療、生活全般まで、ランダムで、予測不能で、不透明で、物事を完璧に理解できない状況でも、不確実性を味方につけ、したたかに生き延びていくことができるのだろう。
サブプライムローンに端を発する金融危機を喝破し、ベストセラー『ブラック・スワン』で全世界に衝撃を与えてから10年。
世界最高の哲人タレブがついに見つけた「答え」、それこそが、「反脆弱性(はんぜいじゃくせい)」だ。
「三つ組(トライアド)」で構成されるこの新しい「知」の本質を理解したとき、あなたは不確実な環境にあっても、予測に頼らずに意思決定することができるだろう。
◆世界中で絶賛の嵐!
「私の世界観を変えてくれた」
ダニエル・カーネマン(ノーベル経済学賞受賞者)
「反脆弱性は不確実性に満ちた世界で成功するための秘訣であり、ランダムな変化を恒久的な利益へと変えるシステムだ。非常に面白い。タレブ氏を好きな人も嫌いな人も、ぜひ読んでみるべきだ」
『エコノミスト』誌
「タレブは精密なウソ発見器を備えた非常に愉快な作家だ。反脆弱性は経済や政治の確実な原理であるだけではない。豊かな生活を送る鍵でもある」
『フォーチュン』誌
「これは、新たな現代思想だ」
『タイムズ』紙
<著者情報>
ナシーム・ニコラス・タレブ(Nassim Nicholas Taleb)
文筆家、トレーダー、大学教授および研究者という三つの顔を持つ、現代の急進的な哲学者。生涯を通じて、運、不確実性、確率、知識の問題に身を捧げており、主な研究テーマは「不透明性のもとでの意思決定」、つまり人間にとって理解不能な世界で生きていくための地図やルールについて考えること。レバノンでギリシア正教の一家に生まれ、ウォートン・スクールでMBAを、パリ大学で博士号を取得。現在、ニューヨーク大学タンドン・スクール・オブ・エンジニアリングでリスク工学の教授を務める。著書『まぐれ』および『ブラック・スワン』(ともにダイヤモンド社)は33の言語で出版されたベストセラーである。